ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
ともに生きる

ボランティアの魅力

大地震や身近に障害者
若者の間に高まる関心
いろんな経験を・視野広げたい

 
 東日本大震災などを機に若者たちの間にボランティアへの関心は高まっている。若者たちはどんな思いでボランティアに参加しているのか、どんな課題があるのか。京都新聞社会福祉事業団が昨年度から始めたボランティア登録制度の参加者らに聞いた。


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ボランティア登録者らを対象にした救命講習。いざ、という時に備えて真剣に学んだ(京都市中京区・京都新聞社本社)
 事業団では車いす駅伝大会や海釣り体験講座など主催・共催するイベントにボランティアの協力を得ているが、ボランティアの技能を高め、事業団関連以外の事業でも活動してもらおうと登録制度を始めた。救命講習などを企画し、必要な技能・技術の習得も図っている。主に学生ら若い人を対象にし、昨年は13人が、今年は9人が登録した。

 このほど、京都新聞社本社(京都市中京区)で開かれた今年度のオリエンテーションには男性4人、女性6人が参加した。谷口明広・愛知淑徳大福祉貢献学部教授の講演のあと、参加者はボランティアに関心をもったきっかけなどを語った。昨年も登録した同志社大の梅山あすかさん(21)は「祖父母が認知症を患い、福祉に関心を持った。大学ではクラブ活動として自閉症の子どもとのふれ合いにかかわっている。昨年は車いす駅伝などに参加したが、多くの障害者やボランティアと交流できてよかった」と振り返る。龍谷大のサークル・社会福祉研究会のメンバーも参加した。代表の3年米戸詩歩さん(20)は「障害のあるいとこがいて、もっと障害福祉のことを知りたいと学んでいる。事業団の制度も生かしながら視野を広げたい」と期待を寄せ、部員の2年今村宏輔さん(20)も「大学時代にいろんな経験を積んで、卒業後は社会的弱者の役に立つ仕事がしたい」と語る。

 ボランティアをやりたくても具体的な活動に取り組む人は多いとは言えない。龍谷大にはボランティア・NPO活動センターが設置され、奉仕先などさまざまな情報に接すことができる。センターが学生から受けた相談件数は昨年度で742件。約2万の学生数からみれば、多い数字ではない。センターのボランティアコーディネーターの東郷珠江さん(42)は「大震災から時間が経つとともに減ってきている印象はある。だれかの役に立つボランティアを経験することで得られるものは大きい。最初の一歩を踏み出してほしい」と期待を寄せている。

人権守り
感謝の気持ちで

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谷口明広愛知淑徳大教授の話


 勤務している大学でボランティアサークルの顧問をしているが、部員は100人を超える。ボランティアに関心のある若い人は多い。ただ、福祉関係に就職する人はそのうちの3割ぐらいだ。

 ボランティアとは献身的な態度から始まった奉仕精神で、よく交通費は出るのかなどの声も聞くが、ボランティアの基本は見返りを期待しないこと。ただ、時代も変わり、自分のためにならなくては長続きしない。人間だれしも楽しいことがあればやれるもので、例えば、だれかに会える、釣りが面白いから釣りボランティアをする―そんなメリットがあってもいいだろう。学生なら就職に有利と考えて始めても不純でない。

 ボランティアで嫌な思いをすることもあるが、感謝の気持ちで行えば続く。それに「人権」は守ってほしい。自分も他人の人権も。ボランティアする側が無意識に加害者になることもある。