京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
|
●ともに生きる
ともに生きるフォーラム
京都新聞社会福祉事業団が主催する「ともに生きるフォーラム」が11月23日、京都市中京区の京都新聞文化ホールで開催された。高齢社会が進展するなかで幸せに生きるにはどうすればいいのかなどをテーマに行われ、弁護士でさわやか福祉財団の堀田力会長が「認知症とともに生きる」、尾藤廣喜弁護士が「いきいきとした老後を過ごすために」と題して講演した。続いての対談でも高齢者福祉の現状や課題が熱っぽく語られ、約150人が聞き入った。
対談ページはコチラ >>>>> ♦♦♦♦♦ 講 演♦♦♦♦♦できることで人とつながる ……堀田力さん
認知症の方々のグループホームを東京近郊で見学した時のことです。すごく親切に案内してくれた方が認知症の利用者の方でした。自分を職員と思って利用者を絶妙のタイミングでトイレに案内する認知症の方もいます。面倒を見る人と見られる人という分け方をしないのです。自分の能力を生かすことがすごく大事なのです。 広島県福山市に鞆の浦というところがあります。一人暮らしの認知症の女性がいて徘徊(はいかい)するのです。地域で見守りを始めました。いつかパターンが分かって見守る必要がなくなりました。おしゃれで80代後半とは思えない方です。しかも驚くべきことに8年間一人暮らしをされています。表情が生き生きして明るいのです。仲間の車いすを押して散歩に出ています。これはすごいことですね。 もうひとつ三重県桑名市のことをお話しましょう。認知症のグループホームの方が子どもの通学路の見守りを買って出ています。すごくうまく行っています。子どもも学校も親も喜んでいます。そのホームに地元の方から大根が届いたりするようになりました。認知症の方の夜間の飛び出しもなくなりました。人はどんな状態になろうと、残された能力を使ってみんなの中でつながって生きていくことが楽しく大切なのではないでしょうか。
ほった・つとむ 1934年京都市生まれ。京都大法学部卒。東京地検特捜部検事、最高検察庁検事などを経て、法務大臣官房長を最後に退職。現在は弁護士、公益財団法人さわやか福祉財団会長として活動している。
孤立せず「頼り上手」になる ……尾藤廣喜さん
高齢者の経済的困窮などをリポートした「下流老人」という本がベストセラーになっていますが、生き生きした老後を過ごすにはどうすればいいのかを真剣に考えていかねばなりません。家族との温かい交流があるか。地域とのつながりがあるか。生きがいが持てているか、これらは精神的条件と言えます。健康であることも大切です。経済的な見通しが立っているかも重要なポイントです。 生き生きとするには孤立していないことが大事です。地域とのつながりができているか。地域に貢献する一方、「頼り上手」になることもおすすめします。困った時に「困った」と相談できること。行政も待ちの姿勢ではなく、困っている高齢者に対しておせっかいできる関係を作ることも重要です。 考えねばならないことはまだまだあります。国が国民皆保険制度を1950年代後半に作ったのは評価できますが、今やこの制度も高すぎる保険料など限界が来ています。介護保険についても同様なことが起こっています。ここ20年ほどで貯蓄のない高齢者が急増しています。「保険料」中心ではなく、公費負担を増額するなど早いうちに制度改革をしないといけないのです。 生活保護の受給者も右肩上がりで、受給者に占める高齢者は50%を超えています。スウェーデンは「生活保護」と同じような制度である「生計援助」を受ける高齢者はほとんどいません。何故かというと、年金受給額が高いからです。日本は年金額が低いために「生活保護」に大きな負担がかかっています。ほんとうに課題は山積なのです。
びとう・ひろき 1947年香川県生まれ。京都大法学部卒。70年に厚生省(現、厚生労働省)入省。同省退職後、75年に京都弁護士会に弁護士登録。現在、日本弁護士連合会貧困問題対策本部副本部長、生活保護問題対策全国会議代表幹事などを務める。
▲TOP
|