ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
ともに生きる

「みんなの元気塾」

お年寄りのニーズ 触れ合える居場所こそ
心も身体も温かに 子育て世代も交流

 

 京都府精華町東畑は近代的な街並みが広がる学研都市のそばにあり、戸数200戸ほどの昔ながらの地域だ。年々、高齢化は進んでいる。「お年寄りたちが毎日、生き生きと生活できる地域を作ろう」と、6年前に地元の人らで立ち上げたのがNPO法人「みんなの元気塾」(森田起一代表)。気軽に集まれるサロンの開催をはじめ、子育て世代の交流広場などを次々と実施し、今では地域に欠かせない存在になっている。元気塾を訪ねた。

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みんなの元気塾の中心メンバー。
左から森田代表、久保さん、古海さん(京都府精華町東畑)
 東畑地域のかかり、立派な石の門柱に「元気塾」ののれんが下がった古い民家がある。元は診療所で、元気塾がお年寄りたちの集まれるサロン会場として借りている。和室4室を開放して使用し、台所も完備している。サロンは毎週月、火、木、金曜の週4日、朝9時から17時まで開き、東畑地域の人以外でも参加できる。学研都市の住宅に住む高齢者の姿も見られるという。参加料は500円。

 集まった人たちはコーヒーなどを楽しみながら自由に語り合ったり、編み物など趣味に興じる人もいる。昼食は自宅でとってもよいし、事前に申し込んでおけば、有料(500円)でランチのサービスも出る。地元の野菜などを使ったメニューをボランティアの女性たちが注文数に応じて手作りしている。元気塾メンバーの久保さよ子さん(61)は「毎日10食ほどを調理しています。メニューはお年寄りの健康を考えて工夫。地元の人たちから野菜などの差し入れもあり助かっています」と感謝する。

 元気塾では月に数回、習字、墨画、カラオケなどの特別サロンを企画し、ボランティアの指導者の協力で開いている。どのサロンも20人以上の参加があり、人気だ。90歳の植西てるさんは「家では昼間は一人ですし、このサロンは週2〜3回利用しています。食事もランチを注文。元気になれるし、ここが出来てほんとうによかった」と喜び、近くの福井千代さん(72)も「ここにいると、心も身体も温まる」と大ファンだ。

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お年寄りたちの元気づくりの場になっているサロン会場
 「介護保険だけでは、お年寄りの福祉のニーズに応えられない。みんなが触れ合える居場所が必要」。元精華町職員の森田代表(64)は役場で福祉事業を担当している時に福祉の現状に思い悩んだ。57歳で早期退職し、同じ考えだった精華町社協職員の古海(ふるみ)りえ子さん(63)と久保さんの3人が中心になって2010年6月、「みんなの元気塾」を立ち上げた。協力してもらえる賛助会員を募る一方、地域内の便利な場所にサロン会場を確保することができ、一挙に具体的な事業へと進展した。13年にはNPO法人になり、子育て世代のお母さんらが集う世代間交流事業も取り入れた。古海さんは「お母さん同士が子育てを話し合ったり、おばあちゃんから子育て体験を聞いたり、世代を超えた交流の場になっています」と話す。多くの活動が認められ、一昨年秋には厚労省の地域支援賞「健康寿命をのばそう、アワード」の優秀賞を受けた。

 森田代表は「委託事業を通して府や町と連携を図っているが、運営は厳しい。それでも、多くの人たちが協力してくださり、地域が少しずつ元気になっていくのがうれしい」と話している。