障害のある人の就労支援を考えるシンポジウムがこのほど、京都市中京区の京都新聞文化ホールで開かれ、京都と新潟の支援団体の代表らが講演と討論で現状や課題などを話し合った。約60人の参加者は、障害のあるなしに関わらず、ともに支え合う職場づくりが企業を変え、地域社会を変えていくとの認識を深めた。
シンポは京都新聞社会福祉事業団が主催し、今年で7回目。4月からは障害者の社会参加をより進める新法「障害者差別解消法」が施行され、職場や地域などで差別解消への積極的な取り組みが求められている。
まず、新潟市障がい者雇用支援企業ネットワーク(通称・みつばち)の事務局を担当する樋口督水(まさみ)さんが基調講演を行った。みつばちは、7年前にできた京都の山城障がい者就労サポートチーム調整会議(通称・はちどり)の活動を手本に、企業関係者を中心に2014年5月に設立された。「新潟県の障害者雇用率は昨年度全国ワースト2だった。それだけに障害者雇用への企業の関心は高く、立ち上げには38社から参加があった」と語り、定期的なセミナーや協議などの活動、支援体制づくりの過程を紹介した。この上で「この業務があるから、この仕事ができる障害者を雇用する。企業の戦力として雇うことが、人を大切にすることにつながる」と話した。
また新潟市と連携し、「みつばち企業認定制度」をスタートさせ、認定企業にはプレートを配布した。「認定企業は1月末で43社。プレートを掲げた企業に就職したいとの障害者からの問い合わせもある」と報告した。
パネル討論では、みつばちを代表して樋口さん、はちどりを代表して時澤久美子さん(府山城北保健所精神保健福祉相談員)、本格的な活動に向けて取り組み中の京都市障がい者就労支援ネットワーク会議(通称・COCOネット)代表世話人の久田和泰さん(シオン代表取締役)の3人が、福祉事業所の運営などを行う林剛さん(EL-LISTON代表取締役)の司会で進めた。障害者の雇用実績がある久田さんは「COCOネットは京都中小企業家同友会の会員を中心に昨年春からスタートし、福祉事業所や行政と連携し、月1回、会議を開いている。今後は医療や教育機関にも参加を呼びかけ、障害者が3年、5年と働き続けられる支援体制を作っていく「と意欲を語った。時澤さんは「はちどりは2カ月に1回、会議を開き、現況報告を行っている。困っていることも含め、事例を共有することが大切。必要なら専門家と連携し、会議や会議以外の場でも連絡を取り合うようにしている」と話した。樋口さんも「1社でできることは限られているが、集まることで大きな力になる」とネットワークの重要性を話した。
障害者の企業への就労について、久田さんは「小さな企業でも1社が1人雇えば、100社で100人になる。単なる障害者支援に止まらず、支え合う地域社会が出来上がる」と語り、時澤さんも「教育機関などとも連携し、地域とともに就労を考えていきたい」と話した。司会の林さんは「障害者の雇用を通して企業が変わることで、地域社会も変わっていく。そのためにも就労支援のネットワークが果たす役割は大きい」と結んだ。