ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
ともに生きる

大学のボランティアセンター

奉仕活動を通して 自主性と学ぶ力育む
学生スタッフが助言や企画

 

 4月の熊本地震でも活躍した学生のボランティア。京都の多くの大学には「ボランティアセンター」が設置され、奉仕活動を志す学生を支援している。単なる情報提供にとどまらず、学生自らが活動を企画するなど自主性を重んじ、奉仕を通した学習にも力を注いでいる。ボランティアセンターの現状をルポした。

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学生のコーディネーターが待機し、奉仕活動をしたい学生を支援する(立命館大)
 立命館大衣笠キャンパス(京都市北区)。学生ボランティアを担当するサービスラーニングセンターがある建物には国際、障害児・者、地域活動などの分野に分けて、奉仕学生募集のチラシが並ぶ。コーディネーターと呼ばれる学生が待機し、相談に乗っている。衣笠キャンパスにはこうした学生が23人いて、交代で詰めている。3年の菜切景子さんは「同じ学生の立場でアドバイスできるので安心してもらえる」といい、宮城県石巻市出身の3年金野綾香さんは「地震で家が全壊し、多くの人に助けられた。少しでも恩返しできれば」と頑張っている。熊本地震ではコーディネーターたちが、寄付者が望む活用目的に沿った募金を企画し好評だった。

 同大学ではボランティア元年とも呼ばれる1995年の阪神・淡路大震災をきっかけにボランティア情報交流センターが設立され、2004年にはボランティアセンターに、さらに08年には現在のサービスラーニングセンターと名称変更した。現在、草津市と茨木市を合わせた計3キャンパスに設けている。同センター主任の木村響子さんは「今の組織は、学生が地域社会のニーズに合わせた取り組みを自主的に企画できるようにし、ボランティアを通した学習も深められるように支援している」と話す。綾部市や京都市京北町などでの地域づくりにも実績を残している。

 佛教大紫野キャンパス(北区)では学生ボランティア室が担当、当初は学生課内に設置されていたが、5年前に社会連携センター内の組織として再編された。組織再編について、同大学社会連携課主任の井上由紀さんは「学生が地域社会に貢献するなかで自らも学び、生きる力を身につけてほしい、との狙いがある」と話す。南丹市美山町や大学に近い北野商店街などと大学が提携を結び、学校跡地の活用法や祭りの企画などに希望する学生が参加している。若者の行動力と発想が地域に刺激を与え、学生側も奉仕した地域で就職したり、卒業後も地域づくりにかかわる人も多いという。

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学生スタッフが企画し、定期的に発行する佛教大のボランティア情報誌「Maitri」
 学生ボランティア室には17人の学生スタッフが所属し、年2回のボランティアフェスティバルの開催やボランティア情報誌の発行など自主的な活動を行っている。学生スタッフ代表の3年岩井達哉さんは「学生スタッフの活動を通して学べることも多いし、少しでも地域の役に立っているのがうれしい」と話す。

 このほか、ボランティアセンターにあたる部署は、龍谷大や京都産業大など私立大学を中心に設立され、今年度からは同志社大(上京区)にも「ボランティア支援室」が新設された。担当職員の澤村隆太さんは「学内にボランティアサークルは増えてきたが、大学が支援することで奉仕活動をしたい学生を掘り起こしたい。『して上げる』の奉仕でなく、奉仕活動を通して自己形成が図るようにしたい」と期待している。