ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
ともに生きる

障害のある人の海釣り体験

魚と人と触れ合い 「最高の1日」に
ボランティアも助け合い、学ぶ場に

 

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一度に複数の魚を釣り上げる参加者も見られ、明るい表情が海面に映った(宮津市・府立海洋高桟橋)
 京都・丹後の海で9月10、11日、「みんなで海釣り−障害のある人の体験講座」が開かれた。寝食をともにしながらの1泊2日の講座には、障害者や介助者をはじめ、高校生や大学生ら多くのボランティアら約220人が参加し、魚との触れ合いや人と人との出会いに、笑顔が広がった。

 19回目の今年は京都新聞社会福祉事業団と神戸新聞厚生事業団が主催し、多くの団体などが後援や協力、協賛をした。参加料は昨年から無料に。障害者は京都、滋賀を中心に兵庫や広島両県からも参加した。

 初日は宮津市の京都府立青少年海洋センターを会場に、夕食をはさんで開講式と釣り教室が開かれ、危険な魚の見分け方や救命具の身に付け方などを学んだ。また、この体験講座の運営に開催当初から尽力し、今年1月に急逝した元自立生活問題研究所所長・愛知淑徳大教授の谷口明広さんに全員で黙とうし冥福を祈った。

 昨年に続いて、障害のある息子と参加した北村栄子さん(55)=向日市=は「息子に今年も行くかと尋ねたら、絶対に行きたいと言ってくれた。寝る部屋が別々で、息子は同室の人と触れ合えるし、私も普段と違う生活でリフレッシュできる」と自宅では味わえない雰囲気に満足そう。車いすの北本晴雄さん(35)=京都市右京区=は「谷口先生とは高校時代から指導をうけ、急逝されたのは本当に悔しい。先生との思い出に浸るために10年ぶりに参加したが、魚と出会い、多くの人と知り合い、人の親切に触れ合えるのが魅力」と語る。風呂場や食堂、洗面所などあちこちで、ボランティアら介助者が障害者を手助けする姿が見られた。

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車いすの参加者も糸を垂れ、家族やボランティアが付き添った(海洋高)
 2日目は宮津市の府立海洋高に移動し、桟橋で海釣りへ。朝早くから高校生をはじめ、釣り団体のメンバーらがサビキ付きの竿(さお)を桟橋に並べたり、氷を入れたクーラーボックスを用意するなど準備を進めた。救命具を付けた障害者らは早速、思い思いの場所に陣取り、海面に糸を垂れた。小アジやカワハギ、カマスなどが次々と掛かり、夫婦で大津市から訪れた吉田昭二さん(74)は「海洋高の前身の卒業生ですが、母校の現在の姿が見られ、多くの人に親切にしてもらい、最高の1日」と初参加を喜んでいた。

 釣り教室で講師も務めた釣りインストラクターの平井憲さん(57)=南丹市=は「釣りの本当の楽しさを障害者の喜んでいる姿から教えられ、私たちも学んでいる」といい、同高1年の中村結愛さんら高校生たちも「釣った魚を針から外したり、サビキに餌をいれたりしていると、気持ちが温かくなる」と話していた。久野病院の看護師、柏靖之さん(40)は「大きなけがをする人もなく、ホッとしている。看護師として教えられることは多い」と参加者を気遣っていた。

主な協力等団体 【後援】宮津市社協

【協力】日本釣振興会近畿地区支部・京都府支部、全日本釣り団体協議会、京都府釣り団体協議会、京都釣具商組合、京都府磯釣連合会、MFG、GFG、京都府漁業協同組合、釣り鯛クラブ、久野病院

【協賛】アサヒフーズ、がまかつ、東芝、東レインターナショナル、マルキュー、マルゴ