ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
ともに生きる

滋賀の子ども食堂

一緒に食べる楽しさ 世代超え心も“ 満腹”
県社協など推進、運営費確保に課題

 
 地域の子どもたちを支援するために東京で始まった「子ども食堂」が今では全国に広がっている。とりわけ滋賀県では県社会福祉協議会が中心となって積極的に推進し、現在、県内52カ所で開催されている。家庭的に恵まれない子どもたちに限らず、幅広い小・中学生、お年寄りたちも参加し、食事を囲みながら和やかな雰囲気が広がっている。来月、初の子ども食堂全国交流会が滋賀で開かれるのを前に、滋賀県内の現状をみてみた。

写真
食後のアトラクションを楽しむ子どもたち。食堂を通して、人と人とのつながりが深まっている(大津市馬場・しらゆり子ども食堂)
 伊吹山が眼前に広がる米原市大野木地区。世帯数約150戸、400人余りが暮らす小さな集落だ。空き家を改装した、たまり場「よりどころ」が子ども食堂の会場で、毎週土曜昼前になると、地区の子どもたちやお年寄りが次々と集まる。食事代は子ども100円、大人200円。メニューは4人グループの主婦2組が交代で考案し、調理する。「有線放送でその日のメニューを流すが、カレーやパンの日は子どもの参加が多い」という。毎回、30食ほどを作り、売り切れる日もしばしば。

 この食堂を運営しているのは、地区の退職者らで2011年9月に結成した「大野木長寿村まちづくり会社」。地区を元気に、との狙いで始めた事業の一環で、一昨年2月から実施した。社長の西秋清志さん(82)は「住民からお米や野菜などをいただき、助かっているが、食堂単独では少し赤字。他の事業の収益から補てんしている」と話す。祖母、姉と参加の小学3年生は「ここに来ればみんなと遊べるし、しゃべれるのが楽しい」といい、83歳のお年寄りは「200円でおいしい料理がいただけ、子どもたちと一緒で元気が涌く」と毎回参加する。

 JR膳所駅に近い大津市の繁華街で歯科医院を開く山元浩美さん(56)が、自身が経営するデイサービスサロンを会場に一昨年12月から始めた「しらゆり子ども食堂」。ここは平野学区の小中学生が中心で、子どもの参加は無料。医院が休診の毎週火曜夕方から開く。山元さんがメニューや調理を担当し、ボランティアの住民が協力する。食事の後は宿題をしたり、将棋や卓球を楽しむ子どももいる。山元さんは「子どもたちの居場所を作りたかった。運営費は各団体や個人からの協賛金などで賄い、昨年度は50万円以上の協力をいただいた。本当にありがたい」と喜ぶ。

 滋賀県内の子ども食堂は県社協や福祉団体などでつくる「滋賀の縁(えにし)創造実践センター」(14年9月設立)が、支え合う社会づくりの一環として後押しし、初年度20万円、その後2年間は10万円ずつ補助している。また定期的に開設準備講座を開くなどバックアップ。各食堂の主催団体は自治会、福祉法人、地区母子会、NPO法人などさまざまで、会場や開催回数、参加対象も地域の事情に合わせている。子どもの食事代は無料から200円程度の食堂が多く、財政的には厳しいのが現状。県社協の林実央主事は「貧困家庭の子どもに限定すると、なかなか集まってもらえない現状があり、だれもが安心して集まれる場にする食堂が多い。県内300カ所の食堂が目標。運営費の確保については、各食堂で工夫してもらっている」と話す。子ども食堂を通して、地域の支え合いに期待が広がる。

 子ども食堂全国交流会は2月10日、大津市におの浜のびわ湖大津プリンスホテルで開かれる。2月6日までに事前申し込みが必要で参加費5千円。問い合わせは県社協 TEL 077(569)4650。