ともに生きる・福祉のページ
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ともに生きる

シンポジウム「障害者の就労支援」
精神疾患、理解進め
雇用義務化に対応を


 障害がある人の就労支援を考えるシンポジウムが先月18日、京都市中京区の京都新聞文化ホールで開かれた。精神科医師や行政の担当者が障害者雇用の現状と課題について講演したほか、精神障害者の就労に日々、取り組んでいる関係者によるパネル討議もあり、会場を訪れた約120人は障害のあるなしにかかわらず、働きやすい職場づくりについて考えを深めた。


「一緒に仕事することで、会社も成長」

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来春からは精神障害者の雇用が義務化される。だれもが働きやすい職場をどう作っていくのか、講演やパネル討議で意識を深めた(京都市中京区・京都新聞文化ホール)
 京都新聞社会福祉事業団が主催し、シンポは今年で8回目。障害者の法定雇用率(2%)の算定対象は現在、身体と知的障害者だが、2018年4月から精神障害者も加わることから、今年のシンポでは精神障害者の雇用問題を中心に討議した。

 京都市中京区で精神科クリニックを開く丸井規博医師が講演。今年1月中に診察した患者人を対象にした調査結果をもとに発表した。精神疾患の内訳では統合失調症、うつ病がそれぞれ3割前後、発達障害が15%を占めた。職業では正社員が7%いたが、4割が無職だった。生活保護を受けている人も5%いた。「統合失調症の人(123人)だけをみると、半数以上が職業を持っていないが、就労を希望している人は多かった。就労の機会が最も必要な人たちといえる」と語った。うつ病の3つのパターンを説明した上で、「長期病気休職中の人の大半がうつ病だった。職場復帰をどう進めるかが課題」と話した。また、発達障害については自閉症、高機能自閉症、アスペルガー症候群に大別できるが、それぞれの特性を紹介した上で「ぎりぎり就労している人、職を転々としている人、一度も働いたことのない人に分かれた。職場では厳しい立場に立たされている人たちかもしれない」と分析した。

 丸井医師はまた、障害者を雇用する企業を対象にした京都府主催の相談に当たった経験も踏まえ、「来年から精神障害者の雇用が義務化されるが、精神に障害がある人の雇用が進むかどうかは日本社会の実力が試されることになる。医療面では専門スタッフの支援体制が欠かせない」と結んだ。

 パネル討議では、2年前に設立された精神障害者の就労支援を図る「アステップむろまち」の管理者大石裕一郎さんと精神障害者を雇用している杉江電機工業(南区)人事担当の大橋美香さんが登壇、京都市障がい者就労支援ネットワーク会議「CoCoネット会議」メンバーの司会で進めた。

 精神障害者の就労は進みつつあるが、1年後の職場定着率は4割、3カ月未満での退職者が多かった。理由は▽体調不良▽職場の人間関係▽仕事がきつい―などで、大石さんは「職場で自信を付けるように工夫したり、その人の強みに合った仕事の提供、企業の人が本人と直接、触れる機会を増やすことも必要。また、支援者が職場に入り、支えられる体制づくりも進めてほしい」と話した。また、大橋さんは職場実習などを通して、精神障害者への会社側の対応を中心に説明し、「全体の流れが理解できないと前に進めないと分かり、具体的に説明するようにし、できることを伸ばす工夫もした。社員も障害者と一緒に仕事をすることで学んだことは多く、会社の成長にもつながっている」と結んだ。

 シンポジウムではこのほか、京都市障害保健福祉推進室の坂巻譲理さんが障害者就労支援の行政の取り組みを説明した。