ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
ともに生きる

過疎地の住民タクシー

交通空白をカバー
支える元気なシニア
法改正で活動制約も 府内50団体運行



 高齢化の進展とともに、お年寄りたちの通院や買い物などの移動手段の確保が大きな課題になっている。とくに鉄道やバスなど公共交通が十分でない過疎地のお年寄りにとってはより切実な問題だ。そんな中、地域の元気な高齢者が運転する「住民タクシー」がまちを快走し、お年寄りには頼もしい交通手段になっている。住民タクシーをめぐる現状を追った。
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住民ドライバー(右)の運転で通院先から自宅に戻ったお年寄り。「本当に助かっています」と家人は喜ぶ(京都府南山城村北大河原)


 人口約2800人、75歳以上の高齢者が23%を占める京都府南山城村。JR関西本線が通っているが、本数は1時間に1本程度で、路線バスはない。「それでは出発します。シートベルトをしっかり締めてください」。後部座席には隣接の伊賀市の病院で透析を終えた92歳の男性が乗る。この男性は週4日、透析に通う。運転するのは住民タクシーのベテランドライバー。小西雄(たけし)さん(72)。元郵便局員で地理には詳しい。男性を自宅の玄関まで送り届けた後、事務所のある村社会福祉協議会まで戻る。一休みしたあと、次の病院まで住民を迎えに行く。「1日に2回出動することはよくある。元気なうちは困っている人を支えたいし、やりがいがある」と仕事が楽しそうだ。

 南山城村の住民タクシーは1999年に「外出支援サービス」として村社協が始めたが、道路運送法の改正でこうしたサービスにつながる福祉有償運送が国への登録制になった。ドライバーの講習も義務付けられ、マイカーを使った運送も禁止された。これに伴って2006年からは事業主体が村になり、村社協に事業を委託(今年度で委託費約400万円)。車両は社協の所有車を活用し、利用者は要介護認定を受けた住民らに限定している。外出支援の目的は「通院」に限り、活動日は月〜金曜の週5回。昨年度の利用は計1122回に上り、村社協福祉活動専門員の村田千穂さんは「通院のため朝8時台の利用が多く、ドライバーや車の手配ができず、曜日の変更や時間をずらしてもらうなど調整している」と話す。利用代金は基本が1時間まで700円で、ドライバーの運転代になる。現在、ドライバーは70歳代を中心に男女12人。隣接の和束、笠置両町でも同時期に外出支援サービスを始めたが、和束町社協では「主な外出目的は通院で、登録会員は59人。昨年度で841件の利用があった。断ることもよくある」と好評だ。

 この4月、南山城村唯一のコンビニが併設された道の駅が幹線道路沿いにオープンし、「通院のついでに買い物も」との要望も上がる。このサービスを利用する目的や運行範囲などは、近隣タクシーの代表らも参加した運営協議会で決まるため、目的などを自由に変更はできない。同村保健福祉課長補佐の土井充さんは「一定の制約のもとで運営していることを理解してもらうようにしている」という。

 京都府高齢者支援課のまとめによると、府内で住民タクシーを運行しているのは現在50団体で、社会福祉団体やNPO法人がほとんど。目的は通院などが多いといい、料金や車両台数、活動日などは各団体によってさまざま。同課は「高齢化とともに福祉有償運送を行う団体は増えている。何より安全に運行してもらうことが第一」と話す。ドライバーの確保など課題もあるが、住民タクシーが身体の不自由な高齢住民の貴重な移動手段になっているのは間違いない。