家計の困窮などで勉学費用への援助を必要とする学生、生徒を対象にした京都新聞社会福祉事業団の2017年度「京都新聞愛の奨学金」贈呈式がこのほど行われた。選考をパスした高校生102人、大学・専門学校生59人の計161人に、総計1980万円が贈られた。
日本の公的奨学金は、卒業後に返済の必要な貸与型が主流。返済期間が長期に及び、滞納すれば延滞金の厳しい取り立てを伴うものも少なくない。所得格差が広がり労働人口の約4割が年収300万円以下といわれるいま、貸与型の制度設計見直し、給付型への転換を求める声は高まっている。
「京都新聞愛の奨学金」は、返済の必要がない給付型で、1965年の創設以来、これまでに京滋の約8700人に累計5億6千万円が贈られている。
53回目となる今回は、312人の応募があった。選考委員会(委員長、岡ア祐司佛教大教授)が家計の実情や応募者の成績などを参考に慎重に審査した結果、一般の部152人、交通遺児の部9人に贈呈が決まった。
京都市中京区の京都新聞社で7月末に開かれた式では、京都新聞社会福祉事業団の直野信之常務理事があいさつ。「事業団の福祉事業はすべて『ともに生きる』がメーンテーマです。人間はひとりでは生きられない存在であり、お互いの助け合い、励まし合いは欠かせません。この奨学金は若い人たちの将来を支援するためのものです。みなさんが、いつか社会人になり、もし余裕ができたら何らかの形で困っている人へ援助をお願いします」と激励。一人ひとりに、封筒入りの奨学金を手渡した。
高校時代から数え通算6回目の受領という大学4年の男子学生は「理系なので授業料に加え、教材費も高額です。親の負担をなんとか減らそうと毎年、この奨学金を受けてきました。お陰で小売業に就職が内定して、感謝しています」と話していた。使い道の第一に模擬試験費用をあげた高校3年の女子生徒は「高齢者施設でアルバイトをしながら、将来は社会福祉士を目ざしています。教材費も多額になっているので、すごくありがたい。大事に使います」と笑顔を見せた。
マスコミ志望という3年の女子大生は「私大の文系で、学費は年間約120万円。パスタの店でアルバイトを続けながら、他の奨学金ももらっています。やりくりは大変ですが、卒業まではがんばらないと。いただいたお金は学費に充てます」。また、高校2年の女子生徒に同伴して来た母親は、隣県に電車通学しているので、毎日の通学費が馬鹿になりません。ソフトボール部の遠征費も高額です。そんな時に、給付型の奨学金は本当にありがい」と声を弾ませた。
贈られた奨学金の主な原資は、京都新聞朝刊「誕生日おめでとう」のコーナーに寄せられる読者からの寄付金(年齢に100円をかけた金額)と愛の奨学金協賛寄付金。最近は、子どもの貧困問題や奨学金制度のあり方をめぐる議論の高まりを反映してか、用途を奨学金に限定した高額寄付も増えている。