障害のある人たちの収入増につながるよう、授産所などの工賃増に向けた取り組みに助成するもので2009年度から始め、本年度は京都と滋賀の8団体に計113万円を助成した。対象は新商品の開発や品質向上のための改良費、新技能や技術を学ぶための研修費など。支援を受けた団体は、どのような事業に活用し、工賃アップに役立てているのか。工夫を重ねる京滋の3施設の取り組みを紹介する。
コーヒーの香ばしいにおいが漂う京都市山科区の自立支援施設「山科工房」。設立40年を迎えた同工房では、雑味の原因となる不良豆を利用者が選別し、こだわりの自家焙煎(ばいせん)コーヒー豆を販売、売り上げを伸ばす。
コーヒー豆の販売を始めたのは3年半前。福祉作業所で取り組む例は少なく、最初は手探りだった。100グラムの少量用焙煎機で始めたが、大手企業の社員食堂などからの注文もあり、次第に生産が追いつかない状況だった。昨年度に助成を受け200グラムの焙煎機を購入し、繁忙期に活躍している。
また、地域との交流にも力を入れるため、今春にカフェを開店。住民の居場所としても人気だ。「豆の選別作業は手間がかかるが、味が全然違う。うちのコーヒーを広く知ってもらいたい」と松井成美所長(50)。課題は営業だ。「マーケティングや営業のノウハウも身につけたい」と意欲を話す。
農産物を加工した自主製品を販売する南丹市園部町のしぜん塾やぎ農園は、昨年度に助成を受け、商品に張るラベルプリンターを購入した。「煩雑な作業が減り、製品の種類も量も増やすことができた」と施設長の新原諒さん(49)。紫芋のケーキやヤギミルクのプリン、トマト煮ベースなど、有機無農薬の安全な商品を開発し、好評だ。
実施主体は高槻市を拠点に訪問介護などを実施する株式会社で、13年に南丹市で就労支援を開始。下請けの菓子作りなどを手がけていたが、利用者の工賃を上げようと商品開発に力を入れると、作業の幅も広がった。だが、食品販売時の表示義務が厳しく、原材料などを記したラベル作成が職員の負担に。プリンターの購入で効率化が図れ、作業が進むようになった。「今後は、通年の販路の確保に取り組みたい」と新原さん。
滋賀県栗東市の社会福祉法人パレット・ミルは、本年度の助成団体。最低賃金適用の就労A型と適用されないB型の二つの事業所を持ち中間的就労の場として運営する。農作業や菓子製造、箱折りから、梱包(こんぽう用の木枠作りや電気コードの結束まで職種は幅広く、就労A型の平均工賃は約14万5千円。B型などの利用者も工賃アップへ向上心を持ち、職員も利用者の意欲を高める努力を惜しまない。
助成金で購入したのは、事故などのリスクが少ない自走式・バリカン式草刈機。「多くの人に草刈りをしてもらえる。メニューをたくさん作り、自分に合う仕事を見つけてもらえる環境に」との中山みち代施設長(69)の思いだ。一人一人の可能性を開き、仕事を丁寧に見立てて工賃アップにつなげる。さらなる高みを目指し、模索が続く。
(フリーライター・小坂綾子)