ともに生きる・福祉のページ
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ともに生きる

京都新聞社会福祉事業団「子育て仲間を応援・事業助成」(18/06/25)

震災の避難者支援
思春期の子に語る場を


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思春期の子たちを対象に開かれたユース・プロジェクト京都(京都市下京区・顕道会館)
 京都新聞社会福祉事業団は、地域で子育て支援活動をしている非営利団体を対象に「子育て仲間を応援・事業助成」を行っている。京都・滋賀で月1回以上、計画的・継続的に活動する団体や、東日本大震災で被災し避難する子どもたちの支援活動を応援している。2017年度は、18年3月31日までに実施する事業に対し、京都、滋賀の14団体に助成した。2団体の事業を紹介する。



大人が挑戦する姿を見せる


 東日本大震災の避難者支援に取り組むNPO法人和(なごみ)。下京区を拠点に生活支援や福祉相談などを手がけるている。昨年初開催したのが、思春期の子を対象にした2泊3日の「ユース・プロジェクト京都」だ。親元を離れて同じ立場の子が集まり、考えたことのないテーマで自由に話すワークショップ形式のプログラムで、17人が参加した。

 思春期に焦点を当てたのは、避難者支援の中で最も置き去りにされている年齢層だからだ。「社会性を身につける頃で、発達段階で大事な時期。なのに避難で生活が変わり、ストレスを抱える子もいる。本当は悩んでいても、自分のために避難してくれた親を責めるようで言い出せず、先生とも関係を作れない、そういう子が自分の言葉でちゃんと語れる場が必要だった」と大塚茜理事長(39)。

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KMPが開催したロケット教室(高島市・びわ湖こどもの国)
 気持ちを語れたことで親子関係が変わったり、笑顔が増えたりといった変化もあり、「話せてホッとした」「心が成長した」などの感想もあった。「聞いてもらった経験を胸に、いつか、悩める子のそばで話を聞ける大人になってくれたら」と大塚さんは願う。

 草津市で活動するNPO法人くさつ未来プロジェクト(KMP)は「大人が変われば子どもも変わる」をモットーに、子育てを支援する。多数のサークルを運営するほか、母親らがイベント主催者として活躍できる舞台も用意。「挑戦することでお母さんに輝いてもらい、そこから親子の笑顔を広げたい」と代表の堀江尚子さん(45)。

 昨年から力を入れているのはロケット教室の開催だ。北海道でロケットを作る植松電機の植松努社長を招いて講演会を催したのがきっかけで、「挑戦を通じて自信を」との思いに共感。植松さんの手ほどきで昨年教室を初開催し、今年は7カ所に広げて製作支援から打ち上げまで、すべての工程をKMPの母親らが担う。参加した子は、ケント紙でロケットを作って空へ飛ばし、感想には「いろんなことにチャレンジしたい」との声があふれる。

 「サークルで、子どもの手をつかんで踊らせようとするお母さんがいるけれど、本当はお母さんが踊ればいい。大人が挑戦する姿を子どもたちに見せ、一緒に自信をつけるきっかけを、これからも作っていきたい」と堀江さんは語る。

(フリーライター・小坂綾子)