ともに生きる・福祉のページ
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京都新聞「愛の奨学金」

「市民の善意」188人に 若者の未来を応援
学生ら感謝、夢実現を誓う


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贈呈式で奨学金を受け取る学生・生徒(7月28日・京都市中京区の京都新聞社)
 生活が困窮するなかで勉学に励む京都と滋賀の若者たちを支える京都新聞社会福祉事業団の京都新聞「愛の奨学金」の贈呈式がこのほど、京都市中京区の京都新聞社で開かれた。54回目の今年は高校生134人、大学・専門学校生54人の計188人に奨学金が贈られた。

 同奨学金は、京都新聞朝刊「誕生日おめでとう」のコーナーに寄せられる読者からの寄付金(年齢に100円をかけた金額)と愛の奨学金協賛寄付金などで運営されており、学校を卒業しても返済の必要のない給付型。今年は、一般と交通遺児の部に過去最多の391人から応募があり、選考委員4人が各家庭の経済状況や学業成績などをもとに選んだ。

 贈呈式では、同事業団の藤木泰嘉常務理事があいさつ。「たくさんの応募の中から選ばれた誇りと責任を心に刻んで、大切にかつ有効に活用して夢を実現していただきたい。そして、みなさんにも、命あるものすべてが共に心を通わせ助け合って素晴らしい人生を送れる社会の実現に、手を貸してほしい」と激励し、対象の若者一人一人に、奨学金を手渡した。

高校3年生の男子は「大学では、ものづくりを支えるための研究に取り組みたい。大学入試にかかる費用や受験勉強の参考書が高くつくけれど、寄付してくださった方々のおかげで素晴らしいチャンスをいただいたので、大人になって恩返しできるよう受験や大学生活を頑張りたい」と決意。大阪の大学に通う大学1年生の女子は、「家計が厳しく、すべて大学の学費にあてる予定。化学が好きで、将来は、世界の水をきれいな水に変える仕事をしたいという夢を持っているので、勉強に励みたい」と意欲を示した。

 また、母子家庭で育った京都の大学4年生の男子は、「大学では部活でラグビーをやっていて、用具や遠征などお金がかかるけれど、母は応援してくれている。奨学金をいただけたので、部活も頑張って母に恩返しができれば」と笑顔を見せた。

 初めて選考委員長を務めた大藪俊志・佛教大社会学部准教授は「奨学金を必要とする理由や将来の目標などをもとに選考したが、厳しい環境で前向きに勉強やスポーツに取り組んでいる人がたくさんいることを実感した。国の財源に限りがあるなかで、京都で50年以上共助の事業が続いているのはとても有意義で、もっと知られて発展し、公共の制度の隙間を埋めていくような仕組みになれば」と期待を寄せていた。

(フリーライター・小坂綾子)

定時制・通信制高校生徒にも

贈呈式では、本年度新設した定時制・通信制高校からの推薦を受けた生徒の部の19人にも奨学金が贈られた。50年以上にわたり働きながら学ぶ少年を支援し続けた「働く少年をたたえる会」(中京区、昨年解散)の事業と意志を引き継ぎ、京都・滋賀の公立高校18校から申請を受けて総額171万円を贈呈した。

京都新聞「愛の奨学金」

京都新聞社会福祉事業団が設立された1965年から始まった。大学生や専門学校生には年額18万円、高校生には同9万円を贈る。2018年度の奨学金総額は、児童養護施設に在籍し贈呈を希望する高校生への奨学激励金147人分441万円を合わせて2691万円。