ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
ともに生きる
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今井政之氏「備前象嵌海老瓶子」
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今井眞正氏「志野十一足花入」
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今井裕之氏「緑色片岩 献上皿」
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今井完眞氏「蛸足」
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羽田登氏「染名古屋帯『芥子と蝶』」 羽田登喜氏「染名古屋帯『蝶』」

京都新聞チャリティー美術作品展


穏やかな社会へ
世代超え思いつなぐ




 芸術の秋を堪能しながら社会貢献できる『京都新聞チャリティー美術作品展』(京都新聞社会福祉事業団、京都新聞主催)が24日から29日まで、京都市下京区の高島屋グランドホール(7階)で開かれる。1983年に始まった恒例の美術展で、36回目の今年は全国約1200人の著名な画家や文化人らから約1500点が寄せられる。親子や三代での寄贈も目立ち、福祉の充実を願う思いが世代を超えて受け継がれている。

 文化功労者で陶芸家の今井政之さん(87)=山科区=の一家は三代での寄贈。政之さんは面象嵌(ぞうがん)の技法で海の生き物などを表現し、繊細かつ躍動感のある描写で命を感じさせる作風。第1回から参加しており、「どなたの手元に行くのか楽しみ。寄贈を通じて社会参加の意識が生まれ、作品に対する思いも変わってきた」と語る。

 父と同じく生物を題材に彫刻で培われた造形力を陶芸作品に生かす長男眞正さん(57)は、「さまざまな社会問題に関心があり、普段の自分のままで誰かの役に立てるのがうれしい」といい、素材の面白さにひかれて金石造形を手がける次男裕之さん(53)は、「父とは違う素材だが、地球からの贈り物をいただき造形する点は同じ。作品が社会貢献につながるなら素晴らしい」。タコの足をモチーフにした器で初参加した孫の完眞さん(29)は、「土砂災害で広島の工房が被害を受け、ボランティアの方の苦労がわかった。作品は自由に楽しんでほしい」と思いを語る。



 府の無形文化財保持者である手描き友禅作家羽田登さん(80)と次女登喜さん(49)も染め帯を寄贈。父登喜男さん(故人)の代から三代を数える。

 ピンク地に大胆な蝶(ちょう)の柄をのせた登喜さんは、「ぜひ近くで見て手仕事ならではの魅力を知ってもらいたい」と語る。

 登さんの作品は、芥子(けし)と蝶を描いた水色の洒落(しゃれ)帯。「京都には素晴らしい伝統工芸があるが、平和で心穏やかでなければ感じ取ることもできない。穏やかに暮らせる社会への一助になりたい」といい、美術展が心豊かに過ごすきっかけにもなればと願う。

 入場無料。作品は入札で求められる。午前10時から午後8時まで(入場は閉場30分前、最終日は午後4時閉場)。

(フリーライター・小坂綾子)