ともに生きる・福祉のページ
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障害のある人の就労支援を考えるシンポジウム

特性の違いを理解 配慮あれば続けられる


 障害のある人の就労支援を考えるシンポジウム(京都新聞社会福祉事業団主催)が先月23日、京都市中京区の京都新聞文化ホールで開かれた。精神障害の特性について医師が講演したほか、障害者雇用を進める地元企業の幹部らがパネル討議し、障害のある人や家族、支援者ら約150人が耳を傾けた。

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障害者雇用について意見を交換する登壇者ら(京都市中京区・京都新聞文化ホール)
 シンポジウムでは、「障害特性を知る〜精神障害のある人を雇用するためには」と題し、まるいクリニック (中京区)の丸井規博院長が基調講演。統合失調症とうつ病、発達障害について、特性の違いや就労の傾向などを解説した。

 統合失調症では、幻覚やさい疑心、感情の平板化といった症状が出て、精神障害のうち最も無職の割合が高いことを紹介。うつ病の場合は、真面目で集団協調できるが、きっちりやろうとしすぎて再発するケースもあることを説明した。

 発達障害については、意思疎通や集団行動が苦手で興味関心の幅が狭いという特性をあげ、「理解力はあるのに行動が伴わず、叱られやすい人たち」と解説した。

 一方、企業の合理的配慮で働き続けられる人の声も紹介。「実習などで実際に会って患者と話すことが大切」とアドバイスした。

人のために力を出す 同じ企業像


 パネル討議は、「地元企業が障害者雇用をする理由とは」のテーマで行われ、障害者を雇用する中小企業の幹部と、就労移行支援事業所の担当者が登壇した。障害者が地域で働き続けられるように支える「京都市障がい者就労支援ネットワーク会議」(通称CoCoネット会議)についての紹介があり、企業側は、雇用の経緯や雇用してみて感じたことなどを説明した。

 京都市内の支援学校の卒業生を迎え、制御盤を作る仕事をしてもらう予定の京都エレベータ(下京区)の田中陽一代表取締役は、「実習に来た生徒は働く喜びを前面に出し、仕事に真剣だった。人のために力を出すことは、障害の有無に関わらず私たちが追い求めている企業像」と語った。健康食品を製造販売するミル総本社(伏見区)専務執行役員の山根雄子(ゆうこ)さんは、「ご縁があり自閉症の方のインターンシップを受け入れた。知らないことを知ることが大切」と強調した。

 また、就労移行支援事業所からは、アステップむろまち(中京区)サービス管理責任者の大石裕一郎さんとアスク烏丸オフィス(同)マネージャーの五十川敦さんが登壇。実例を紹介し、「一つの会社でもいろいろな仕事があり、できることが一致すれば就労が進む」などと語った。

 企業側と支援側が共通して実感したのは、「知る」ことの意義。互いに知らないまま勝手にイメージして尻込みしていたことなどを打ち明け、「接点がなければ問題を解き明かすこともできない」「知る機会を作っていこう」と確認した。

 (フリーライター・小坂綾子)

京都市障がい者就労支援ネットワーク会議(CoCoネット会議)
2015年7月に発足。企業、福祉、教育などの各分野の約40人が参画し、障害のある人が継続して働き続けられるように障害者や受け入れ先を支援している。事務局はしょうがい者就業・生活支援センターはあとふるアイリス075(682)8911