ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
ともに生きる

子ども食堂(2019/06/24)

まず地域をリサーチ 形より先に入り込んで


 ごはんを通じて地域ぐるみで子どもたちを見守る「子ども食堂」が広がっている。京都や滋賀でも支援体制が整い、始めやすくなったが、開設や運営には何が大切か。子ども食堂の現場を訪ねた。

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子どもも大人もみんなで一緒にごはんを味わうハピネス子ども食堂(京都市南区唐橋)

垣根設けず、
おいしく食べる場に


 京都市南区の唐橋文化教育会館。夕方になると、宿題を持った小学生や地域の親子ら人がごはんを食べにやって来る。2児の母である宇野明香さん(37)が月2回開く「ハピネス子ども食堂」だ。

 宇野さんが食堂をスタートさせたのは2016年。貧困や虐待に苦しむ子の力になろうと区役所に開設を相談した。自宅にも近い唐橋学区での開設を決め、区の補助制度を利用した。紹介を受けた自治会長と開催場所を考え、飲食禁止だった会館の床にシートを敷くことで開設を実現。企業の人事の仕事で関わりのある学生に声をかけるなどボランティアを募った。

 「貧困や虐待を前面に出せば『ここに来る子は複雑な家庭の子』という見られ方をして、来にくくなる。垣根を設けずみんなでおいしく食べる場にしようと思った」と宇野さんは話し、さまざまな家庭の子どもや親が訪れる。

 子ども食堂は、貧困家庭の子たちの食事を確保する目的で12年ごろから始まり、NPOや社会福祉法人、自治会など、運営母体は多様だ。

 京都府では、17年度から開設費と運営費を支援する。開設費は20万円または経費の3分の2のいずれか低い額、運営費は1回1万円で実施日数(上限150日)または経費の3分の2のいずれか低い額を支援。18年度は42カ所の運営を支援し、本年度は43カ所から申請がある。申請は締め切っているが、二次募集をする可能性もある。

 京都市は、17年度から「子どもの居場所づくり支援事業」で子ども食堂の普及に力を入れ、建物の改修や増築、食材費など対象経費の3分の2以下(上限10万円)の初期費用を補助する。市の担当者は「運営者が食堂を始める時に対象となる子どもの姿が見えていることが大切なので、形を作るより先に地域に入り込んで」と助言する。

 滋賀県では、県社会福祉協議会が中心になって早くから取り組みを進め、昨年度までのモデル事業では、3年間で最大40万円を助成してきた。現在は118カ所まで増え、「小学校区に一つ以上」を掲げて300カ所以上の開設を目指している。昨年8月には新たに「子ども食堂つながりネットワークSHIGA」を立ち上げ、1回10万円の開設助成や寄付物品の分配などで支えている。

 自治体の支援が充実してきたが、開設しても続かないケースも目立つ。京都市のアドバイザーを務めるNPO法人山科醍醐こどもの広場理事長の村井琢哉さん(38)は、「問題を解決したいという支援者側の思いに地域をはめようとするのではなく、目の前の地域と子どもの現状を見て、その子たちとどう一緒に暮らすかという視点が大事」と話す。開設には、地域の特色のリサーチや住民とのコミュニケーションが欠かせない。

 (フリーライター・小坂綾子)

相談窓口は次の通り。
▼京都府=府家庭支援課 075(414)4585
▼京都市=NPO法人山科醍醐こどものひろば 075(591)0877
▼滋賀県=県社会福祉協議会 077(567)3924