ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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京都新聞「愛の奨学金」贈呈式(2019/08/19)

意欲ある若者応援 市民の善意175人に
生徒、学生ら感謝、夢現実を誓う


 京都新聞社会福祉事業団の2019年度京都新聞「愛の奨学金」贈呈式がこのほど、京都市中京区の京都新聞社で行われた。経済的には恵まれない環境にもめげず、夢や目標を持って学業に励む学生、生徒たちを支援する趣旨。55回目の今年は、選考委員会(委員長・大藪俊志佛教大社会学部准教授ら4人)で選ばれ大学、専門学校、高校生ら計175人に贈られた。


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贈呈式で奨学金を受け取る学生・生徒(8日、京都市中京区の京都新聞社)

 所得格差が広がり、子どもの貧困が社会問題となる中で、奨学金は後に返済が必要な貸与型から、返済不要の給付型中心に転換するよう求める声が高まっている。しかし、国の奨学金制度でも転換は、ほんのわずかしか進んでいない。

 愛の奨学金は発足時から給付型を貫き、これまでに京都、滋賀の9000人を超える学生、生徒に累計約6億円を贈ってきた。

 本年度は全3部門に338人の応募があった。うち、一般の部と交通遺児の部計320人について選考委員会が家計状況や学業成績、作文などを慎重に審査した結果、高校生99人、大学・専門学校生58人の計157人が選ばれた。公立高の学校推薦を受けて選ばれる定時制・通信制の部(高校生)は18人、奨学激励金を贈る養護施設の高校生は165人が決まり、本年度の受給者総数は340人・総額2592万円となった。

 贈呈式では、京都新聞社会福祉事業団の藤木泰嘉常務理事が奨学金の趣旨や選考の経過を説明。「この奨学金はすべて寄付金で賄われています。寄付者は、人間国宝の歌舞伎役者さんや市民の方までさまざま。多数の支援が積み重なった結果であることを認識して大切に使ってください。困った時は助けられ、困っている人を見たら助けることを忘れずに」と激励した。同席した選考委員長の大藪俊志・佛教大准教授のあいさつのあと、藤木常務理事から一人一人に封筒入りの奨学金が手渡された。奨学激励金については後日、各施設担当者に託される。

 贈呈式に出席した京都市内の公立高3年の女子生徒は「農業科なので将来はバイオテクノロジーで植物を増やす研究がしたい。奨学金は進学の費用に使います」と、笑顔を見せた。

 滋賀県在住の私立大2年の女子学生は、学費と通学費が負担と明かしながらも夢を語った。「幼少から国際線のキャビンアテンダントを目ざし、今は英語を専攻しています。語学留学もしたいので、この奨学金は本当に助かります」


作文に親思う切実さ

大藪俊志選考委員長(佛教大社会学部准教授)の話

選考に当たっては、成績だけでなく作文を読み込んだ。目標に向かって何を勉強して努力が将来にどう結びつくか、などを精査した。作文からは、家計の厳しさを知る子どもたちが、自分でできるだけのことをして親の負担を減らそうと思いやる切実さを感じた。国、地方で学生の負担を減らす方向へ、奨学金全体の役割を見直してほしい。

京都新聞「愛の奨学金」

京都新聞社会福祉事業団が発足した1965年から始まった給付型の奨学金制度。朝刊紙面「誕生日おめでとう」コーナーで年齢へ100をかけた金額(20歳未満は2千円)を寄せた読者からの寄付金や個人・団体・企業からの奨学金協賛寄付金が主な原資。奨学金の支給額(年額)は高校生9万円、大学・専門学校生18万円、奨学激励金は3万円。