社会貢献しながら芸術の秋を楽しめる『京都新聞チャリティー美術作品展』(京都新聞社会福祉事業団、京都新聞主催)が19日から21日まで、京都市下京区の
高島屋グランドホール(7階)で開かれる。1983年に始まった恒例の美術展で、37回目の今年は全国約1000人の著名な画家や文化人らから約1200点が寄せられる。京都を代表する重要無形文化財保持者(人間国宝)の工芸作家らの作品もそろう。
工芸で人間国宝に認定されている村山明さん(75)=宇治市=は、欅(けやき)の木を加工し、拭漆(ふきうるし)で仕上げた「欅拭漆髪飾(けやきふきうるしかみかざり)」を寄贈。ほどよい丸みをもたせ、絶妙な薄さに仕上げて漆を重ね塗り、金箔(ぱく)をアクセントにした上品な一品だ。
工房では、木目を見ながら位置取りし、何十種類ものノミやカンナから道具を選び、形を作って漆を拭く。それぞれの材の良さを生かす丁寧な作業は、作品の大小に関わらず同じ。「私の作品は、使うほどに自分のものになる。作り手としては、愛着を持って使ってもらえればうれしく、工芸の良さを広く知ってほしい」と話す。
また、染織の「羅(ら)」と「経錦(たてにしき)」の二つの分野で人間国宝の認定を受けている北村武資さん(84)=上京区=は、「卓飾 羅金」を寄贈。人間国宝で文化功労者でもあり、文化勲章も受章している志村ふくみさん(95)=右京区=も紬織の数寄屋袋「道」を寄贈し、人間国宝の3人がそろうのは2年ぶり。
漆芸作家の伊藤裕司さん(89)=右京区=も2年ぶりに出展。顔料を漆に練り込む色漆の技術を使った「鴛鴦(おしどり)」を寄贈した。耀(よう)貝や卵のからも使い、色彩豊かに描写した作品で、「作品を通して社会貢献できればという思い。小さいけれど、華やかな場面を表現している」と話す。
千葉県のガラス作家藤田潤さん(68)は、父の代から2代続けて参加している。今回は、たゆたう海の青色にパステルカラーの航路が映える作品「飾筥(かざりはこ) 海上の道」を寄せた。「作家が満足することはもちろんだが、見る人の共感を得られてはじめて作品が成り立つ。自由に見てもらい、心の中に癒やされるものを感じてもらえれば」と期待する。
入場無料。作品は入札で求められる。午前10時から午後8時まで(入場は閉場30分前、最終日は午後4時閉場)。
(フリーライター・小坂綾子)