ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
ともに生きる

手話の広がり

思い伝える言葉学び 新たな出会いに魅力

ろう者と健聴
ともに感じる面白さ(2020/01/13)



 講座の普及などで手軽に学べる場が増えた手話。聴覚障害のある人のコミュニケーション手段の一つだが、学ぶ健聴者も増えている。各地で手話サークルが活動し、19日には京都市内で京都手話フェスティバルも開かれる。手話の普及を図ろうと活動する人たちの思いを聞いた。

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交流を楽しむ手話サークル「伏水」のメンバー
 毎週金曜日の夜、京都市伏見区の区役所の一室に、手話サークル「伏水(ふしみず)」のメンバーたちがやってくる。10代から70代までの男女26人が登録し、地域の聴覚障害のある人たちから手話を学んでいる。取材に訪れた日は年末の最終日で、手話でのスピーチや、手話表現にとらわれず身振り手振りで伝える伝言ゲームを楽しむなど、会場は盛り上がりを見せた。メンバーの仲松大樹さん(32)は「手話を通じて出会いがある。地域のろう者とともに活動しながらさまざまなことを学べることに、みんな魅力を感じている」と話す。

 日本で初めて誕生した手話サークルは、1963年設立の京都市の手話学習会「みみずく」。現在は11支部、会員数は約400人にのぼる。京都府手話サークル連絡会には、みみずくも含め28団体が加盟し、連絡会に加盟せず活動するサークルも増えている。

 「手話サークルは、以前は聴覚障害のある人たちのよりよい生活のために、一緒になって活動する組織だった。環境も変わり、理解も広がり、サークルの趣旨が変わりつつある」と同連絡会会長の永浜治夫さん(60)。活動を作りあげてきた人たちがサークルの中心にいるが、手話講座を受けた後に「勉強」感覚で参加する人も増えている。そういった受動的な人をどう巻き込むかが課題だという。

 能動的に手話を楽しむきっかけの一つになっているのが、京都手話フェスティバルである。国際ソロプチミスト京都―弥生、京都府聴覚障害者協会、京都新聞社会福祉福祉事業団の主催で、聴覚障害者への理解、手話の普及と発展のために開き、その中のスピーチコンテスト出場は、サークル会員らの目標の一つになっている。

 「伝わる手話、伝わる言葉が求められるため、出場者は『生きた手話』を学ぶ。言葉を並べるだけでない手話の本当の面白さに目覚める機会になる」と永浜さん。同フェス実行委員会の事務局も務める仲松さんは「サークル内から出場者があると、地域のろう者やサークル員みんなで支え、人との関わりが生まれ、手話がますます楽しくなる」と話す。

 今年は15回目で、特別企画もある。実行委員長を務める村上達也さん(39)は「同フェスティバルは、初心者からベテランまでが手話への思いを話し、見る人も楽しむことができる場。15回記念の展示や初心者から学べる手話ブースもあり、心ゆくまで楽しんでもらえれば」と参加を呼びかけている。

 (フリーライター・小坂綾子)

第15回京都手話フェスティバル
1月19日(日)午後1時〜5時、京都市中京区の京都新聞社7階の京都新聞文化ホールで開かれる。一般の部、子どもの部の手話スピーチコンテストや奈良県立ろう学校演劇部によるアトラクションのほか、特別企画として、聴覚障害のある人から自己紹介や日常会話が学べる手話体験コーナーや手話言語条例を制定している府内の自治体の取り組みを紹介するコーナーを設ける。