ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
ともに生きる

障害者就労支援シンポ

住み慣れた地域で 経済的に自立を

医療や行政、企業など参画
ネットワークの有効性確認(2020/03/09)



 障害のある人の就労支援を考えるシンポジウム(京都新聞社会福祉事業団主催)が先月15日、京都市中京区の京都新聞文化ホールで開かれた。障害者雇用をすすめる地元企業の幹部や支援者らがパネル討議したほか、障害のある人を雇用するラーメンチェーンの取り組みも紹介され、障害のある人や家族、支援者ら約110人が聞き入った。

写真
障害のある人の就労支援について考えたシンポジウム( 2月15日、京都市中京区・京都新聞文化ホール)
 パネル討議では、「障害のある人が自分らしく働くためには〜地域連携の現状とこれから」と題し、障害者の就労支援ネットワークに関わる福祉、学校関係者ら、障害者を雇用する企業などの6人が登壇。京都市障害者就労支援ネットワーク会議「CoCoネット」に参画するグラン・ブルー代表取締役の石井雄一郎さんがコーディネーターを務め、登壇者が順に、ネットワークが有効に働いたケースなどについて意見を述べた。

 南山城学園障害者就業・生活支援センターはぴねすセンター長の日置貞義さんは、府内でいち早く発足した「はちどり(山城障がい者サポートチーム調整会議)」の取り組みを解説。「発足以前は、難病や高次脳機能障害の人への対応など、わからない部分もあった。ネットワークには、医療や行政、教育、企業も入っているので、多様なケースで相談し合え、実践を積み重ねて対応力を上げていくことができる」と有効性について語った。

 乙訓地域に昨年発足したネットワーク「乙訓就労交流会」に参画している向日が丘支援学校教諭で進路指導担当の夏川久子さんは、「卒業後に福祉就労に進む人もあり、企業の協力でB型事業所に仕事の一部を任せてもらったり、販売の場を提供してもらったりして工賃が上がればうれしい」と語り、住み慣れた地域で支援を受けつつ経済的に自立する支えとしてネットワークが機能することに期待した。また、ネットワークによって、企業を通して障害者への社会の理解が広がる可能性にも触れた。

 一方、障害者雇用を進めている企業側からは、ネットワークについて「専門家の意見が聞けるのがありがたい」「情報交換できるのが良い」といった声があがった。

 新晃自動車工業(久御山町)代表取締役の辻尚宏さんは「以前は、障害のある人のことがあまりわからず、どのように仕事を教えていけばいいか悩んでいた」と打ち明けた。急に気分が悪くなったり、遅刻や欠席が続いたり、という事態に対応できないこともあった。「医療や福祉の関係者とつながれたほか、同じような企業さんと成功例や失敗例を共有できたことがとても大きかった」と話した。

 辻さんは、京都中小企業家同友会で経営労働委員会委員長も務めており、「障害のある人が働きやすく改善すると、生産性もあがり、社員の周囲への対応も親切になる。今注目のSDGs(持続可能な開発目標)の理念にも通じる『誰一人取り残さない社会』を、経営を通じて作っていきたい」と語った。

 フォーラムでは、これに先立ち、ラーメンチェーン「魁力屋」(中京区)の常務管理本部長丸本純平さんによる「魁力屋で取り組む障害者雇用〜なぜ魁力屋では障害のある人が長く働くことができるのか」と題した講演もあった。

 (フリーライター・小坂綾子)