京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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●統合失調症を生きて
まだ社会的認知が十分進んでいない統合失調症の当事者である森実恵さんが 無理をせず、ぼちぼちと
統合失調症の人は、普段どんな生活をしていると思いますか。
一般の人からかけ離れた特異な日常生活を送っていると想像される方もいるかもしれませんが、実際にはそんなことはありません。 朝は大体5時ごろに起きます。子供が遠方の大学に通っているため、早く起きざるをえないのです。(ちなみに子供は2人とも国立大学に合格させることができました。受験の前には私が必死で勉強を教えたので、そういう意味では普通の母親より、教育熱心なほうかもしれません。)それから、弁当と朝食を作ります。弁当のおかずは、大体前の日の夜に下準備をしているので、支度は15分ぐらいで完了です。 しかし、睡眠導入剤を飲んでいるので、この時間に起きるのは正直大変な苦行です。子供を送り出したあと、再び寝ます。2度目に起きるのは大体10時ごろです。 それから、遅めの朝食をとり、ゆっくりと新聞を読みます。洗濯などをしているとすぐにお昼です。昼食を食べたあとは、また横になり、しばらく本を読んだりします。午後からは原稿を書いたり、メールを送信したり、図書館に行くことが多いです。夕方5時ごろになると、夕食の支度にとりかかります。夕食は1時間ぐらいかけて、きちんと作ります。一汁三菜が基本で、野菜や魚、大豆製品を中心にしたヘルシーな献立になることが多いです。 夕食後はまた本を読んだり、見たい番組があるときは、テレビを見たりします。9時ごろにお風呂に入って、10時前には就寝します。平凡すぎるほど平凡な一日ですが、健康だったときに比べると、やはり疲れやすく、体力がないため、いろいろな用事を細切れにしかすることができません。 15分間掃除機をかけただけで、疲労感を感じ、すぐにお茶を飲みたくなってしまいます。ティータイムが一日に6回も7回もあるわけです。 仕事は週に3、4日わかちあい電話相談や事務の仕事をしています。いずれも短時間の就労です。しかし、講演のあるときには突発的にエネルギー出力が高まります。朝早く起きて重い荷物を持ち、遠方まで出かけます。2時間近く、立ったりすわったりしながら、しゃべりつづけ、帰路につくころには全エネルギーを使いはたし、ぐったりしてしまいます。 けれども、旅行や観光が好きなので、泊まりで出かけるときには、次の日の朝また早く起きて、名所巡りをすることが楽しみです。趣味は読書、旅行、温泉巡りなどでしょうか。統合失調症になったから、人生を楽しむことができなくなるということはありません。 少しずつ、細く長く、無理をせずにぼちぼちとのんびりペースで自分なりの人生を歩んでいきたいと願っています。 森 実恵(もり みえ)氏 大阪府在住。2006年にリリー賞(精神障害者自立支援活動賞)、07年に糸賀一雄記念賞、09年に第35回部落開放文学賞。著書に「心を乗っとられて」(潮文社)「心の病をくぐりぬけて」(岩波ブックレット)「なんとかなるよ統合失調症」(解放出版社)。
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