京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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●広がる 地域の輪
使う人の喜びを支えに |
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オープナーの改良など、協力しながら自助具を製作する会員たち(京都市下京区、「ひと・まち交流館 京都」) |
柄(え)が多様な形のスプーン、上から押すだけの、台付き爪切り・・・。病気や障害で生活動作が不便な人を助ける自助具が、京都市下京区の「ひと・まち交流館 京都」の福祉用具展示コーナーで作られている。60平方メートルの部屋には加工用機械や工具が備わり、自助具づくりボランティアグループ「京 自助具館」の会員が製作に励む。
2003年に京都市長寿すこやかセンターが開いた自助具の製作講座を機に、修了生が結成した。登録会員は約20人。金属加工や木工、施設設計の専門家から、ものづくり経験が無い人も加わる。リウマチの不安から、自身の自助具をと活動を始めた女性もいる。平均年齢64歳、半数以上は男性だ。
活動日は毎月第2、第4週の木曜と土曜日。午前10時から分担して作業を進める。成形加工や組み立て、パソコンでの事務作業、新人のアドバイスに回る人もある。
取材日は牛乳などの紙パックを開封するオープナーを改良中。指先に力が入らない人には、紙パックの口は貝をこじ開けるくらい固い。プラスチック製の試作品はわずかな力で開く工夫がされ、チョウのようにかわいい形だった。「機能と同時にデザインも大切」と、皆で試行錯誤を続ける。
溶接業を営む男性(50)は参加して2年ほど。障害者スポーツなどボランティア経験が多いが、ここは、ものづくりの原点を考える機会にもなっている。使う人の要望を聞き取り、設計・製作し、使用時まで見届ける。「仕事では味わえないトータルなものづくりが魅力。人に喜んでもらえ、自分も勉強させていただいてる」と言う。
利用の相談は事務局の同センターが受け付ける。必要に応じて依頼者と、小嶋寿一・同センター福祉用具相談役、会員が加わり、専門相談の場を持つ。作業療法士やケアマネジャーが同席する場合もあり、使う人の状況に最適な自助具を考える。製作が決まれば会員の出番。一から考案するほか既製品の改造でも対応する。使い勝手を確認する中で手直し作業も多く、一点を完成させるのに半年かかることもある。
包丁が固定できる片まひの人用まな板、弱視者用書見台など、これまで数々を実費で提供してきた。09年度は相談件数46件、提供した製作自助具53点。製作点数は横ばい傾向だが、相談はスタート時の1・5倍に増えた。
副会長の秦恒夫さん(61)は「必要とされる方はたくさんいる。一方で『自助具』という言葉もご存じない人が多いのが現実。もっと自助具を広めないと」と語り、広報にも力を入れる。京都各地で開かれる福祉イベントで展示するのをはじめ、数年前から会員が交代で京都府作業療法士会の機関紙に連載を続けている。また07年度から年1回、府立菟道高校の社会人活用授業で、1年生を対象に自助具について教えてきた。
今年度、同センターは7月と2月に各1日ずつ、自助具製作ボランティアの養成講座を開く。小嶋さんは「ハンディキャップがある人のための道具作りに関心を持って」と、活動の広がりに期待している。
京 自助具館
京都市下京区河原町通五条下ル「ひと・まち交流館 京都」内
京都市長寿すこやかセンター TEL 075(354)8741