ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

円滑な活動へ互いに調整
奉仕の志 緩やかにつなぐ(2011/05/31)


写真
職員と一緒の入居者にエプロン姿で話しかける「よりみち」月曜メンバー(健光園)

健光園ボランティアの会



 お年寄りがくつろぐデイルームの窓から、新緑があふれ手入れの行き届いた花壇が見える。京都市右京区にある高齢者福祉総合施設「健光園」の一角だ。

 特別養護・養護老人ホーム(計70人)や配食サービス(約100食)などを運営する健光園で、利用者の暮らしを職員とは違った角度から応援するのが、約70人いるボランティアたちだ。  先の花壇は園芸ボランティアグループ「むくげの会」が毎週手入れを続けている。「よりみち」グループは、施設内で売店を週3日開く。配食の弁当盛り付けに毎日通う近所の主婦たち。月1回訪問し、衣類の寸法直しや繕いに精を出す「ニャン手会」。外出付き添いを担当する人や陶芸指導をする陶芸家など。これら計12グループ・人のボランティアを緩やかにつなぐのが「健光園ボランティアの会」(進士保代表)だ。


 健光園はボランティア受け入れ担当者を置いているが、ボランティア主導の組織ができないだろうかと提案し、1994年に会が発足した。当時、定年後で活動を始めたばかりの進士さんがまとめ役となった。「施設での活動内容はそれぞれ違うが目的は同じ。一緒に学んだり、連絡や調整ができればいい」と引き受けた。

 毎月1回、3グループから世話人1人が出て連絡のための定例会を開くほか、年1回は総会と、関西圏の高齢者や障害者福祉施設を訪ねる見学会を企画する。

 定例会は活動で生じる問題を調整する場でもある。例えば、糖分の摂取制限がある人が菓子を買いに来た時は職員に相談することや、活動上の備品や消耗品については必要に応じて施設側に経費申請を、といった具合に話し合う。

 施設側はボランティアの受け入れ業務や活動にかかわるすべての会計処理などを行い、会はボランティア自らが調整役となることで活動の円滑さを図っている。


 「よりみち」はメンバー約10人。売店はティッシュや洗剤、文具などの日常雑貨や50種以上の菓子類をそろえている。メンバーが入居者の好みを酌みながら、仕入れ段階から運営する。外出が困難な人も買い物を楽しみ、ひとときボランティアと触れ合うコーナーだ。

 水曜日、開店と同時に連れ立ってやって来た入居者に、笑顔で応じるのは通い始めて33年の大川美佐子さん。当初はシーツ替えの手伝いから始まり、今は月2回、売店を担当する。地域の清掃など率先して行う家庭で育ち、「ボランティアをするのは普通のこと。その時に無理なくできることをしているだけ」と言う。大川さんの住まいは施設から歩いて5分の近さ。ほとんどの人が右京区在住だ。

 進士さんは83歳になるが、健光園以外に6カ所でボランティアをする。京都市社会福祉協議会ボランティアアドバイザーで、ボランティア養成の講師を務めることもある。「ボランティアは単なる奉仕ではない。義務や強制ではなく、自分からお願いしてさせていただく活動。ちっぽけな自分でも役に立ち、喜んでもらえたと感じた時のさわやかさ。それが自分の喜びになっている。生涯続けたい」


健光園ボランティアの会事務局
京都市右京区嵯峨大覚寺門前六道町12、健光園内 TEL075 (881) 0401