ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

当事者の尊厳を守る支援
家族同士がつながり情報交換(2011/08/23)


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「認知症ホッとタイム」と名付けた交流会で、ミニ照明具を作る認知症友の会会員や参加者ら(ゆめりあうじ)

認知症友の会



 「認知症友の会」は、若年性認知症患者の家族同士が当事者と一緒に交流する会。宇治市の吉田照美さん(36)が2008年11月に発足させた。

 吉田さんの父の民治さん(72)は50代から認知症の症状が出始め60代で若年性認知症と診断された。

 認知症は進行の度合いなどで症状が違う。数分前の出来事を忘れ、物の名前が分からなくなってきても、場面に応じコミュニケーション能力を発揮する人はいる。

 吉田さんは、自ら患者家族として悩む一方、能力が残っていても社会から切り離される本人のつらさも軽減したいと、当事者の尊厳を損なわない支援策を模索。交流可能な当事者を中心にし、家族同士がつながり支え合うことを会の方針に決めた。

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 会員は当事者8人、家族ら21人の計29人。宇治市を中心に、京田辺市、京都市などから集う。

 活動の一つが月1回開く交流会。今月は7日にJR宇治駅前にある市の複合会館「ゆめりあうじ」であった。参加者は当事者2人を含む3家族と、学生ボランティアや福祉関係の見学者ら総勢14人。

 この日は和紙を使ったミニ照明具作りがメーン。見学者も一緒にテーブルを囲み、花やロウソク形など思い思いにランプ・シェードを作る。民治さんともう一人の男性当事者(63)も楽しそうにしゃべりながら、サポートを受けつつ完成させた。横では家族が情報交換や世間話。民治さんの孫は、ボランティアを巻き込んでトランプ遊び。当事者がふらっと部屋を出て行っても、誰かが見守っている。家族は気兼ねなく、穏やかな時間を過ごしている。

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 初対面では気付かない症状の認知症でも、24時間共にする家族は他人の想像を超える心身のストレスを抱える。会員の佐賀智恵さん(64)は、夫が発症した時に通院先の看護師に友の会の活動を教えられた。「それまでは近所の人に知られたらと、外に出るのも嫌だった。入会で一歩踏み出せ、周囲の人にきちんと知ってもらう覚悟ができて気持ちが楽になりました。知人の顔も忘れてしまう本人ですが、交流会は楽しみにしていて、家では見たことのない笑顔で話してます」と言う。別の会員女性(67)は、「(認知症の)夫を施設に預けたら自分の身体は楽になるけど、可愛そうで気持ちがふさぐ。ここは同じ状況の家族同士なので、どんなことも共感して話し合える。支援制度など情報が聞けるのもありがたいです」。吉田さんは「認知症は当事者周囲の人間関係を壊す。家族は孤立しがちですが、引きこもらず、新しい関係を作ることを考えればいい」と会の位置づけを語る。

 交流会前は、希望者でランチを共にする。快く受け入れてくれる和食カフェが会場近くにあり、この日は10人が出向いた。「家族一緒に外食できる」。皆の顔は明るい。

 交流会の他にも個別相談や、革小物などを作る就労支援プログラムがある。毎年秋は一般を対象に、認知症について学ぶ「暮らしの中の認知症講座」を開き、早期発見や認知症理解の手助けもしている。次のステップは組織のNPO法人化で、現在最終段階。その先には、拠点になる事業所づくりという夢がある。


認知症友の会
宇治市大久保町平盛15の82(吉田方) 携帯電話090(3054)7368