ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

社会の変化映し活動広がる
楽しく、教えながら学ぶことも(2011/12/20)


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火曜日の八日市日本語教室は午前中なので女性が多い。熱心にマンツーマン指導が続く(東近江市八日市浜野町、東近江NPOセンター)

八日市日本語教室ボランティアグループ



 昨年末の滋賀県の外国人登録者数2万6471人(滋賀県調べ)。外国人人口は県人口の1・5%を占め、全国平均を上回る(2010年国勢調査)

 「八日市日本語教室ボランティアグループ」(沼田重昭代表、38人)は、県内でも外国人が多い東近江市で、市と周辺地域の外国人に日本語を教えている。

 会は1997年春に発足。八日市国際交流協会(現・東近江国際交流協会)が初めて開催した「日本語指導者養成講座」の修了者のうち約20人で始めた。背景には、地域の製造業で働く日系ブラジル人の急増があった。地元住民は生活習慣の違う見慣れぬ人たちに不安を募らせ、日本語が分からない外国人は孤立していく。発起人で会顧問の白木和男さん(82)は、「このままじゃいかん。互いに理解するために学んだことを生かそうと思ったのです」と話す。

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 教室は火、土、日曜日の週3回、1回1時間半開く。毎回、会員6〜9人が学習指導者を務める。平仮名の読みに始まり、テキストの絵や身振り手振りを交えて単語や日常会話を教える。

 受講料なし予約不要で、毎回何人来るか分からないが、昨年度は、年間で11カ国延べ749人、1回平均約6人が学びに通った。

 火曜日教室をのぞいた。会場は近江鉄道・八日市駅から徒歩数分にある東近江NPOセンター。この日はペルー、ベネズエラ、ベトナム、中国、韓国の5カ国計6人がやって来た。

 火曜教室リーダー浅成重行さん(70)が担当するのは、来日1カ月余の中国の少年(16)。来春、日本の高校を受験予定で、受験生用の数学問題集を持ち込んでいる。漢字を使った筆談も駆使して教える浅成さんは、「問題を解く能力はあるのに問いの日本語が難しい。全教室に通い必死で勉強しています。もっと時間があれば」と気遣う。ペルーの女性は日本暮らしが10年以上。日常は困らないが専門用語や正確な話し方を学びたいという。丁寧に対応する徳永佳子さんは発足時からのメンバー。「私が逆の立場だったらどんなに困るだろう、と思って続けています」と言う。一時中断後、2年前から再び通う韓国女性の会話はずいぶん滑らか。雑談も交え教えるのは小杉美津枝さん。「活動が役立てばうれしい。教えるこちらも学ぶことが多く、楽しいです」

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 14年間の活動状況は、出入国管理の法改正や不況、外国人の定住化といった社会の変化を映す。

 沼田代表は「教室に入らないほど来られた時もありましたが、リーマン・ショック以降は職を失い母国に帰る人も多く、手持ちぶさたの日もあります。最近は中国からの増加が目立ち国籍は多彩に。日本人と結婚して来日した女性も多い。大多数が日本語を話せなかったかつてと比べ、ある程度話せる人が増え、キャリアアップのため日本語検定試験を受けたい、と勉強する人もいます」と語る。

 そんな変化の中に、言葉が分からないまま日本の学校に通う外国籍の子どもの問題がある。会は07年から東近江市内の小学校に会員を派遣し、外国籍の児童に日本語や生活習慣を教える「出前教室」に取り組む。1校から始まり、今年は5校になった。時代に添う新たな試みが広がり出している。


八日市日本語教室ボランテティアグループ
東近江市建部堺町9の3(沼田方)、TEL 0748(22)6714