ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

話の内容、スクリーンなどに表示
学習会を重ね技術習得(2012/02/21)

京都市要約筆記サークル「かたつむり」パソコン部


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学習会でパソコン入力の練習をするパソコン部メンバー。後方のホワイトボードに、その場の発言が次々表示される(京都市聴覚言語障害センター)
 中途失聴者や難聴者に、話の内容をその場で書いて伝えるのが要約筆記。手書きに加え、パソコンを使った要約筆記も広がっている「かたつむり」(1980年結成)には、13年前からパソコン要約筆記の勉強を続ける有志グループ(通称「ひよこ」)があり、昨年4月にパソコン部として位置づけられた。

 パソコン部のメンバーは34人。女性が多く男性は1割ほど。難聴者3人が加わる。ほとんどが京都市が実施している要約筆記者養成講座(現名称)の修了者で、市要約筆記者派遣登録をし、公的派遣で活動する。二人一組で話の内容をパソコンに入力し、スクリーンなどに表示する。昨年度は約100件の派遣依頼があった。講演や研修会のほか、結婚式の披露宴などにも出向くことがある。

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 パソコンは、単語登録や変換機能で難しい漢字や専門用語もすばやく正確に打ち出せ、情報を多く盛り込めるが、この利点を生かすには技術習得が欠かせない。部長の滝村富子さんは「速く正確に分かりやすく伝える責任があるので、全員がムラなくレベルアップするのが目標です。タッチタイピングの練習も必要ですし、適切な要約は重要な課題です。パソコンは情報量が増やせるからといって、発言すべてを文字にすると読む方が疲れます。難聴者メンバーの意見を聞きながら検討を重ねています」と言う。

 毎月2回、京都市聴覚言語障害センターで学習会を開く。年間カリキュラムを組み、プロジェクターなど機器の扱い方、読みやすい文字の大きさや色、表示の速度などを意見交換しながら学び合う。

 1月の学習会をのぞいた。担当者が、準備してきた新聞記事を1分間約80字の速さで読み、各自がノートパソコンに打ち込む。終了後は記事と照らし合わせ、脱字や変換ミスがないかチェックする。入会1カ月目の60代女性は、小首をかしげ「難しいですね」。5年目の40代女性が「実際の活動は話し手も内容も毎回違う。速く打てるだけでもだめなんです」と、現場対応力の大切さを語る。

 当日の「情報保障者」担当になると、学習会の進行に沿って発言内容をすべて要約筆記しホワイトボードに映し出す。議論が白熱してくると熟練者も追いつけない。学習会は実践の場でもあった。

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 黒川友紀子さんは7年半の活動歴。活動の意味を深く感じた出来事がある。「始めて間もないころ、無音状態にしたテレビを要約筆記の文字を読みながら見る体験をしました。衝撃でした。テレビの内容がほとんど分からない。この情報のなさが一生続く大変さを思いました」「要約筆記は情報保障支援です。精いっぱい務めようと活動しています」。

 聴覚障害者は全国に約27万6000人。30・2%はコミュニケーション手段に筆談・要約筆記を挙げる(06年、厚生労働省調べ)。難聴者の推計数は600万人とも、それ以上ともされる。「必要とする方々に比べ、要約筆記者の数は全く足りません。養成講座で学び、ぜひ活動に参加を」と滝村さんたちは呼び掛ける。

 今年も5月〜11月、センターで市要約筆記者養成講座(手書きとパソコン)が開かれる。


京都市要約筆記サークル「かたつむり」パソコン部
京都市中京区西ノ京東中合町2、京都市聴覚言語障害センター気付
TEL 075(841)8337 FAX 075(841)8312