ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

持ち主持参で修理過程を共有
ものづくりの楽しさ知って(2012/05/08)

SKYおもちゃ病院


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粘り強くおもちゃの故障原因を探り、修理に集中する会員たち(京都市左京区下鴨北野々神町、市葵児童館)

 「どうです?」「難しいかなあ、ゼンマイが切れてますわ」。「豆球がつかんし、動かん。スイッチ部分ですかな」「いや、原因はいくつかありそう。電子回路の周辺を順番にみていきましょか」

 子どものおもちゃを無償で修理するサークル「SKYおもちゃ病院」(勝木淳一郎代表、12人)の「ドクター」たちは、ドライバーやラジオペンチを手に知恵を絞り腕を振るう。

 サークルは2009年11月に発足。シニアの自主的な活動を支援する京都SKYセンターの「おもちゃ病院ドクター養成講座」受講者でつくった。京都市左京区の葵児童館(月1回)と伏見区の住吉児童館(隔月1回)で定期的に開催するほか、年数回は公的な施設やイベントでコーナーを設け依頼に応える。持ち主親子の持参が原則で、「修理過程を共有して物の大切さや再生の喜び、ものづくりの楽しさを知ってもらう」が基本姿勢。動かない、音が出ない、折れた・・・と持ち込まれるおもちゃをその場で直す。10年度は280点、11年度は157点を修理した。

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 12年度の活動は4月21日に葵児童館でスタート。11人のドクターが顔をそろえた。3歳児と一緒に修理を頼みに来た母親は「子どもが気に入ってますし、直して下の子にも使わせたいので」という。早速、電池切れや接触不良といった問題がないか、電源周りをチェック。次に分解して原因を探っていく。

 持ち込まれる半数以上は電子おもちゃだ。部品交換の必要があれば、ドクターたちは大阪・日本橋の電気街まで出掛け、部品を探して問題を解決する。

 通信関係の仕事をしていた神賀重善さん(69)は専門知識が豊富。「交換部品がなかったり高価な場合は、百円ショップで音や光が出る品を買って内蔵の部品を取り出しておき、代用します。修理前の音と違ったりはしますが、子どもさんが納得すれば直せるので」と裏技を明かす。昨年入会した女性会員(69)は「5人の孫がおもちゃをすぐ壊すので、何でも直せるスーパーばあちゃんを目指そうと勉強中。繕いなどは、お役に立てると思ってます」と言い、この日は縫いぐるみを丁寧に縫い合わせていた。「昔の遊び道具とは驚くほど違いますね」と笑う中野貞美さん(79)は、「木製や手動おもちゃを直すのが楽しい」と言う。

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 2時間半の間にキャラクター人形や模型自動車、ゲーム盤など10点を受け付け、7点が「完治」、2点は損壊具合などから修理不能、1点は時間内に解決せず会員が預かって直す「入院」扱いに。途中、壊れたおもちゃを手に幼児が泣き出したり、小学生がテスターの使い方を教わる場面もあって、盛りだくさんのうちに「閉院」となった。

 おもちゃ病院を開くグループは全国に推定で400ほどあるという。勝木代表は「近くでは京都府内と滋賀に計4カ所あります。今後は連携して、日々進化するおもちゃの情報交換や、人手が足りない時に相互応援する機会を増やしたい。個々の得意分野を伸ばすことで会全体のレベルアップを図り、多くの子どもさんに喜んでもらいたいです」と話している。


SKYおもちゃ病院
京都市山科区大塚丹田17の10=勝木方=、携帯電話 090(5662)5338