ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

「効率よりも確実」に作業
チーム組み、病院や施設へ(2012/06/19)

京都車いす点検ボランティア「スイマルク」


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入念に車いすの点検を進める「スイマルク」のメンバー(京都市下京区新町通松原下ル、総合福祉施設「修徳」)

 車いすを安全かつ快適に使えるように、福祉施設や病院に出向いて点検・整備し、問題があれば専門業者に修理に出すよう助言するのがボランティアグループ「スイマルク」。2005年6月に発足した。前年に京都市内で開かれた、車いす利用支援に関する講習会の参加者有志が結成した。会員は、初めて工具に触れた人からエンジニアまで、女性3人を含む35人。20代〜70代と幅広い。

 毎月、2〜3回の点検活動と、連絡や事例報告をする定例会を1回開く。手足に紙を巻き体の自由を制限して車いすに乗り使う人の状況を体験するなど、研修も随時行う。代表の堀田典男さん(54)は、「使用者にとって車いすは体の一部です。乗る人のことを常に考えて活動してほしい」と言う。

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 点検は3〜6人でチームを組み、京都市内を中心に依頼を受けた施設へ出かける。  取材日は下京区の総合福祉施設「修徳」が現場。5人が工具や手作りの携帯作業台など一式を持ち込み活動していた。午前10時から午後4時まで、ヒューマンエラーを防ぐために原則2人1組で作業をする。会独自の点検シートに沿って、枠組みから車輪、シート部分と順を追って調べていく。項目は約30。溶接の不具合やタイヤの亀裂はないか、ブレーキの制動力は十分か…。

 高齢者福祉施設事務職員の西山泰介さん(32)は2回目の参加。「仕事上、車いすの仕組みを知る必要があると思い入ったのですが、想像以上に複雑で奥が深い。しっかり勉強して成果を職場に広げたい」。ペアを組む堀田さんが、工程ごとに手本を示し細かに説明する。パーツを留めるねじの向きひとつにも「使う人の体を傷つけない」という理由がある。技術を過信せず、分解は慎重に、調整は丁寧に組み立ては確実に―。真剣に耳を傾け、工具を振るう西山さん。実際に乗って走行確認する最終チェックまで2時間近くかかり、2人の額に汗が浮かぶ。

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 結成時からのメンバー長塩吉男さん(72)と尼崎正晃さん(66)が担当した1台は、フットレストを動かすたびキーキーと鳴った。潤滑油を差しながら「音がすると、夜中にトイレに行く時なんか寝てる人に気を使うしなあ」と2人。機械修理に明るい長塩さんは「車いすは自転車とはまた違う。使用者の使いやすいように改造した車いすは正規の仕様に戻してはだめですし、使うのが部屋の中か外かとかで、1台ごとに調整は変わる」と言う。全体の汚れを丹念に落としていた尼崎さんは「日常生活で使うから、食べこぼしなどの汚れが重なり徐々に傷む。ふくだけで随分傷み方が違うのですが、なかなか手が回らないのでしょう」。

 入会4年目の植村幹夫さん(75)はこの日のチームリーダーを務め、全体の作業を冷静に監督する。「効率よりも確実が一番。手抜かりがあったら大変です」。最後まで表情を緩めず、完了した計9台の修理必要個所を確認し、報告や記録作業をこなしていた。

 「ボランティアだからといった甘えはない」という会員の自負心が信頼される点検につながる。7年間に扱った車いすは約1300台。2度、3度とみるケースもあり延べ数は約1900台。月7、8件ある依頼に応じ切れないのが悩みだ。現在、会員募集中。


京都車いす点検ボランティア「スイマルク」
京都市下京区河原町通五条下ル 京都市長寿すこやかセンター気付
携帯電話 090(4763)5058