ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

健全な食生活 きめ細かく
専門性生かし大切さ伝える(2012/07/31)

京都食育キャラバン隊


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小学1年生に食の大切さを楽しく伝える京都食育キャラバン隊メンバー(京都市中京区、洛中小)

 夏休み間近の今月10日、京都市立洛中小学校の1年生の教室で、好奇心を膨らませた児童たちが待ち構えていた。今日の授業には、学区内に事務局を置く京都食育キャラバン隊がやって来るのだ。

 京都食育キャラバン隊は、子どもたちに食べることの大切さを伝えているボランティアグループ。京都の大学で学んだ管理栄養士たちが中心となり、2003年に結成した。市内の幼稚園や保育園を訪問し、幼児に分かりやすいように工夫した手作り教材を使って食育活動を続けている。近年は地元の洛中小での食育支援のほか、妊婦指導、子育て交流会、大人を対象にした講演など活動の幅を広げ、京都市外から声が掛かることも増えている。

 龍谷大学短期大学部准教授の内田眞理子さんを隊長に、隊員20人。全員が管理栄養士や栄養士の資格を持つ。

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 この日、洛中小を訪れたのは5人。もじゃもじゃ頭の博士に扮した隊員が進行役を務める。ペープサートや演技でオリジナルの物語を繰り広げ、太陽の下で育った食べ物を食べる大切さを伝える。

 キャラバン隊が考案したカード遊びも人気が高い。台形、四角、長方形の3種のカードを船体、操縦室、煙突に見立て、3枚組み合わせて船の形にする。カードには食品群別に3グループに分けた食べ物が描いてある。台形はエネルギーに、四角は骨や血や肉になる食べ物、長方形は体の調子を整える食べ物だ。「朝ごはんに何を食べたかな?」。児童たちは食べたもののカードを探し、船ができるか確かめる。「どの部分が欠けてもお船はちゃんと動きません」と博士。栄養バランスの良い食事をゲーム感覚で教えていく。

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 隊員は20代〜70代。職場も病院、学校、企業など幅広い。月1回のミーティングは、多様さを活動に生かしていく機会でもある。  栄養教諭の井上眞由美さんは30年以上、学校が職場。「知識があるだけではだめで、子どもの年齢や理解力に応じた伝え方をすることが大事」と言い、教材作りや台本作りに欠かせない人。20代の子どもが4人いる野村有紀子さんには「3食きちんと食べさせることが大切」と、主婦・母親現場からの視点が。20代の久保優子さんは「小学生の時、給食が大嫌いだったのに栄養士さんが来てからおいしくなったのが印象深く、自分の進路につながった」と、栄養士の影響力を実体験で語る。自宅の町家を事務局に提供する中井邦子さんは、食にかかわる文化にも関心が高い。「専門性を生かし、それぞれが地元でも食育の大切さを広げていければ」と言う。

 日本では、食を取り巻く環境の変化から健康や食の安全などにさまざまな問題が生じ、05年には食育基本法が制定された。

 「学生たちを見ていても食生活の乱れが気になる」という内田さんは、「食育」が浸透し始めたのを歓迎。「幼児期に健全な食生活を知る経験があれば、食が乱れる時期があっても、また元に戻せます」と話し、皆の意見を反映させながら、今後もきめ細かな活動を続ける心構えだ。


京都食育キャラバン隊
京都市中京区猪熊通三条下ル 「三条猪熊なかい」方、TEL 075(606)4550