ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

支え合いの重さを実感
「自力で無理な作業」引き受けて(2012/10/09)

メンズボランティア手助け隊


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例会で依頼先の所在地の確認をし、段取りを話し合う手助け隊会員(城陽市立福祉センター)

 京都府南部の城陽市に、市内の高齢者や障害がある人などのちょっとした手伝いをする男性のボランティアグループ「メンズボランティア手助け隊」がある。公的な支援制度に該当せず、業者に頼むほどでない家庭内の作業を引き受ける。家具の移動や身近な物の修理、庭の草刈りなどで、自力では作業が難しい人を手助けする。

 城陽市社会福祉協議会が2001年春に開いた「男性ボランティア入門講座」の受講者らで、同年6月に結成した。

 会員は64歳から81歳の荒木廣雄会長まで12人。「現役時代にできなかった分、これから地元にお返しを」「大工の技術を生かしたい」「年金をもらえば公務員みたいなもの。役立たないと」─。参加動機は各人各様だが、「喜ばれた」「市内あちこちに知り合いができた」「仲間から学べる」と手応えを感じている。依頼は年間70〜100件。11年間で約千件に上る。

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 毎月第1、第3金曜日の夜、城陽市寺田の市立福祉センターで例会を開き、市社協を通じて依頼された案件の報告と手配をする。

 9月7日の例会は9人が集まった。植木の刈り込みと草刈りの計3件の依頼があり、手助け隊庶務の上山正二さん(67)が内容や必要人数を説明。日程調整し、延べ13人の出動を決めた。行き先を住宅地図で確認し、道具や方法の相談もする。発足時から率先して活動し四百回以上出動してきた荒木会長は、最近腰を痛めて軽作業しか引き受けられないが毎回出席している。「こうした活動は後に続く人が居なくなるものですが、幸い続いてます」と、会員のやり取りを穏やかに見守る。

 翌週、依頼があった独り暮らしの女性(84)宅に3人が出向いた。作業は原則午前中。午前9時に現地集合し、垣根の刈り込み作業を始める。庭木の枝切り中に、ハチの巣が見つかり中断する場面もあったが2時間で終了。ごみ袋六つ分の枝葉と枝の束が小山を築いた。手術後で動きにくい女性は、「伸びた枝が通行人の迷惑ではないかと気がかりだった」と言い、ホッとした表情で感謝していた。

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 依頼が多いのは草取りや植木の枝切り、掃除という。「困っておられれば行きますが、私たちは便利屋と違うので手伝える家族がいる場合は、説明してお断わりしています。シルバー人材センターや業者と競合するのも趣旨ではなく、専門家に任せられる部分は手を出しません。ただ、経済的に困っていて頼ってこられる場合もあり、線引きに悩みます」と上山さん。世話役は気苦労がある。

 さまざまな依頼の中でメンバーの記憶に残る出来事を聞いた。

 5年前の夏。寝たきりの夫の世話を妻がする高齢者世帯から、蛍光灯の取り替え依頼があった。出向くと、家中の電球・蛍光灯はすべて切れていて、居間の蛍光灯が最後の明かりだった。担当した東川一男さん(78)は「誰にも頼めずギリギリまで辛抱されたのだろう。掃除の手伝いを申し出たが、辞退された。それ以上は踏み込めないですが今も気に掛かる」と言う。手助けを必要としても、声を出せない人もいる。活動目的の「住民同士が支え合える地域づくり」の深さ、重さが伝わってくる。


メンズボランティア手助け隊
城陽市寺田東ノ口17、城陽市社会福祉協議会気付
TEL 0774(56)0909