ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

村人の温かさも包んで
献立、調理、配達…主婦ら協力(2013/03/05)

配食サービス・さくら


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手分けして手際よく弁当を作る「配食サービス・さくら」のメンバー(南山城村北大河原大稲葉、南山城村保健福祉センター)

 京都府の南端に位置する南山城村。JR「月ケ瀬口」駅から車で数分行くと村の保健福祉センターがある。毎週金曜日の午前中、館内の調理実習室は桜色のエプロン姿で活気を帯びる。南山城村社会福祉協議会の登録ボランティアグループ「配食サービス・さくら」の人たちが、独居のお年寄りや高齢者世帯に配る弁当を作る。

 村は人口3145人、高齢化率37・5%(2013年1月末)。

 安否確認を兼ね、手作り弁当で和んでもらおうと、02年から活動している。それまでは業者の弁当を配る形だったが、センターが建ったのを機に民生委員や食生活改善推進員、主婦らが調理協力をすることになった。ボランティアは50〜80代の75人。4つの班に分かれ、各班が月1、2回、調理や配達を担当する。利用者は村全域の46人、配食事業が始まった94年当時より3割ほど増えた。

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 今月15日の金曜日は朝から雪だった。調理当番の3班の11人は、定刻より半時間ほど早い午前8時半には集まり、料理にかかる。メニューは炒(い)り鶏、ポテトサラダ、酢の物、オレンジ寒天。

 届け先へのルートには山道や狭い道も多く、雪道になると時間がかかる。昼食に間に合うよう、待たせないよう、勢いを増す雪に、知らず知らずに手が急ぐ。炒り鶏を早く煮含めるために根菜の下ゆでに工夫し、全品の調理進行を合わせ、息の合った連係で通常より小一時間早く仕上げた。

 班長の横畑君子さん(67)は「悪天候は調理に集まるのも、届けるのも支障が出て困りますね。でも一番気になるのは衛生面。この時期はインフルエンザやノロウイルス対策に神経を使います」。

 献立は、当初からボランティアで協力する栄養士が、栄養価を考え減塩などに配慮して立てる。メンバーは事前に目を通し、時には試作もするという。毎回、主菜と副菜2、3品、デザート付き。

 活動歴10年の嶋田幸子さん(65)は「ご飯は軟らかめに、堅いものは包丁目を入れるなどしています。私たちも利用するかもしれないのですし。これ、喜んでくれはるやろかと、心を込めて作っています」。

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 午前10時半過ぎ。弁当は地域別に配達ボランティアに託される。大堀人美さん(59)は5軒回る。「届け先で長くは話せないけれど顔を見るだけでも安心します」

 長年利用している女性(82)は、大堀さんが手渡した弁当の底にそっと触れて「温かい」と笑顔に。「優しい言葉も一人暮らしにはうれしいこと。包み紙には料理方法が書いてあるので、保存しておき、たまに自分で作ってみます」

 活動の黒子役は村社協の担当者大久保礼子さん(46)。食材の注文、当日利用者数の確認、班相互の調整、自身が弁当を届けることもある。配食の日は、きちんと届いたか、無事に終わったかと終日気になるという。

 15年以上、毎月、弁当に添える絵手紙を人数分手描きして寄せる人がいる。小物を贈る人、畑で取れた旬の野菜を寄付する村人もいる。村に都会の便利さはなくとも、人の温かさが豊かにある。


配食サービス・さくら
京都府南山城村北大河原大稲葉4 南山城村社会福祉協議会気付
TEL 0743(93)1201