ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

利用者の笑顔が原動力に
近所づきあいのような支援(2013/04/09)

翔鸞ふれあい銭湯


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お年寄りを見守るメンバーたち。入浴前に看護師が利用者の血圧を測るなどし、安全第一で(京都市上京区六軒町通今出川下ル、玉の湯)

 広い浴場の高窓から春の光が降り注ぐ。京都市上京区の翔鸞学区にある「玉の湯」。100歳の男性が手助けを受け、自力でゆっくりと入浴を楽しんでいた。湯上がりにはお茶で一服。「翔鸞ふれあい銭湯」を利用して4年目になる男性は「足も伸ばして湯につかるんはええぐあいや。皆さんようしてくれはる」と、にこやか。

 月1回開くふれあい銭湯は、翔鸞住民福祉協議会のボランティア活動のひとつで、デイ銭湯部が担当する。活動が始まったのは1995年から。高齢や障害などのため、自宅での入浴が難しい人を対象に、玉の湯の定休日の第3土曜日(午後1時半〜4時半)に実施する。主婦ら、平均50代の男女10人のメンバーが、利用者の送迎と入浴介助をする。

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 利用できるのは原則、地元を中心に上京区内の人。多い時期は20人ほど登録があったが、現在は6人。平均年齢87歳。部長を務める波多野耕次さんが毎回事前に利用希望を確認し、受け入れの手配をする。「当日、急に来はったりということもあるけれど、人手が足りなければ、他のボランティアも手伝ってくれる」。機械的でなく、融通し合い、近所づきあいの延長のような支援を続けている。

 そろいのTシャツを着て、お年寄りの衣類の脱着を助け、背中を流したり洗髪するのは女性メンバー。「(介護保険の)デイサービスで入浴している人も、ここは時間の制約がないからいいと来られる」「銭湯は自宅の風呂場より暖かく伸び伸びするよう」

 車での送迎を引き受ける男性は「迎えの道中は無口だった人が、帰る車中ではよく話される」と、入浴でお年寄りの気分がほぐれる様子を語る。

 風呂場の準備は玉の湯経営者の妻竹内悦子さん。休日返上だが「子どもたちも手伝ってくれるのでなんでもないこと。昔の常連さんがふれあい銭湯で来られて、懐かしがっておられるのを見るとうれしいです」。利用者の笑顔が原動力になる。

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 ふれあい銭湯の日は、近くの西陣病院の看護師が地域活動として毎回加わり、京都保健衛生専門学校の学生が老年介護実習の一環で手伝いにやって来る。波多野さんは「お年寄りは若い人としゃべるのも楽しみなようです。翔鸞から引っ越した人も利用されている」と言う。

 顔なじみになった利用者も多い。「これでビールがあったら最高やという人がいた」「大きい声でよう怒鳴らはるじいちゃんもいたなあ」「(入浴前は)カチカチやった手足が帰りは柔らかくなって、気持ちよさそうやった」。一緒になったお年寄り同士で話が弾み、2時間近くになった時もあった。思い出す場面はいくつもある。

 かつては1回10人ほどの利用があったが、最近は人数が減ってきた。「それでも必要とする人がいる間は、引き継ぐ人をつくっていかなあかん」と波多野さん。

 3月の開設日。終了前に脱衣場で利用者を囲んで、しばし雑談。昔の西陣織の商いの話に、皆がゆるりと耳を傾けていた。


翔鸞住民福祉協議会デイ銭湯部
京都市上京区今出川通六軒町西入ル、波多野さん気付 TEL 075(464)1340