ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

多文化共生社会を目指し
電話相談などで外国人支援(2013/07/23)

京都YWCA・APT


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6月の電話相談の日に集まったAPTの相談員。この日は入れ代わりつつ計7人が待機した(京都YWCA)

 APT(アプト=アジアン ピープル トゥゲザーの略)は、フィリピンなどから興行ビザで入国する女性が激増した時代を背景に、1991年に京都YWCAが立ち上げたグループ。困っている在日外国人を支援しようと、外国人の電話相談を核に、多文化共生社会を目指して活動を続けている。

 電話相談は毎週月曜午後1〜4時と木曜午後3〜6時。専用電話075(451)6522で、男女計16人のボランティア相談員が交代で対応する。言語は日本語、タイ語、タガログ語、中国語、英語が中心。3人同時に話せる電話システムを導入し、必要に応じ通訳担当者を交えて話す。専門知識が必要な場合は、オブザーバーの弁護士や行政書士が協力する。

 相談件数や内容は、景気の浮き沈みや入管法ほか関連法の改正を反映し変化してきた。相談件数は96年度の182件をピークにここ数年は100件程度。2012年度の新規相談は90件だった。継続相談は増加傾向にあり、8年継続の相談者もいる。内容は労働関係や在留資格の相談が多い時期を経て、離婚や子どもの教育、ドメスティック・バイオレンス(DV)などが目立ってきている。

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 京都YWCA内にAPT専用の小部屋がある。相談時間帯は相談員が複数人で待機し、待ち時間は相談ケースの検討や打ち合わせに当てている。

 相談者の限定はしていないが、約9割はアジアの人だ。今年度のAPT代表・張善花さんは「(在日外国人の中で)より立場の弱い外国人の相談が多くなる」と言う。張さんは韓国籍で京都大大学院の留学生。日本に来て驚いた体験があった。「日本語をうまく話せないころに役所に行った時のこと。職員の不親切な応対に困ってしまい、英語で話すと途端に丁寧な応対になった」。国籍で偏見を持ちがちな日本人社会を感じたという。

 外国籍の夫を持つ神門佐千子さんは活動歴20年余。父系主義だった日本の国籍法の改正を求める活動をしていた延長線上で、在日外国人の暮らしに役立ちたいと加わった。振り返れば「法律面は改善された部分もある」とみるが、新たな外国人管理の方向もうかがわれ、常に法や制度、社会状況を学ぶ必要性を思う。APTは研修活動にも重きを置く。

 半年前から活動する女性は企業に30年勤めた人。「7年間アメリカで仕事をしたが、外国にいると一つでも困ったことが起きると恐怖だった。ニュースにならない個人的な生活の中にも助けを求める声がある。大丈夫ひとりじゃないよ、と伝えられれば」という。

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 電話だけでなく、役所や弁護士事務所、病院などに同行することも増えている。昨年から相談員養成講座も始めた。相談事業だけでなく、学校などに講師を派遣して、日本で暮らす外国人の現状や守られるべき人権について理解を広げる活動も続けている。活動経費は京都YWCAからの補助と維持会員の会費、寄付に頼るが台所事情は厳しい。張代表らは「ぜひ支援を」と訴えている。


京都YWCA・APT
京都市上京区室町通出水上ル、TEL 075(431)0351