ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

不登校悩む母に安心感
経験のスタッフ、相談やシンポ(2014/02/04)

親子支援ネットワーク ♪あんだんて♪


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10年間で活動の拠点は4回移転したが、いつもスタッフたちの明るい声が響く(京都市山科区)

 JR山科駅に近いワンルームマンション。ここが「親子支援ネットワーク ♪あんだんて♪」の活動拠点だ。音楽用語から取ったグループ名の通り、「ゆっくり、じっくり歩もう」をスローガンに、主に小学生から高校生の子どもの不登校などに悩むお母さんたちの支援を息長く続けている。

 活動の中心に位置付けている「おしゃべり広場 ゆうスペース」。訪れたお母さんたちは、スタッフを交えて子どもへの接し方、夫や兄弟姉妹との関係、学校への向き合い方などを自由に語り合う。代表の福本早穂(さほ)さん(60)=大津市=は「同じ境遇の人たちと話すことで、お母さんたちはすごく安心されます。続けて来られたお母さんが明るくなり、表情も変わって、子どもが自ら動きだした家庭もとても多いです」と振り返る。

 最初から多くの人と話すには抵抗があるお母さんには「個別相談 オンリーワン」を設けている。相談者からスタッフ2人が悩みなどを聞く。1人1時間半程度を予定しているが、2〜3時間になることはザラだ。「相談内容に合った進学などの情報や私たちの経験はケースに応じて話しますが、安易にアドバイスはしないことにしています」と話すスタッフ(55)。福本さんも「子どもたちは学校に行っていなくても着実に成長しています。親は、その子たちが動きだすのを温かく見守ってほしい」という。相談者たちは話をすることで得られる「安心感」を求めて訪れているのだろう。

 スタッフは現在10人。かつて、わが子の不登校に悩み苦しんだ人たちだ。それだけに、今、悩んでいるお母さんたちの苦しみも、子どもたちの日々の葛藤もよく理解できるという。1年前からスタッフに加わったお母さん(43)は、中学生の息子の不登校で苦しみ、インターネットで知った「ゆうスペース」に参加した。「それまでは、不登校の本を読んだり、学校の先生に相談したりしていたが、心を開いて話すことはなかった。ここに来て、スタッフから“大丈夫”といってもらえ、すごく安心できた。それに、同じように苦しんでいる仲間がいて、ありのままを話せたのも、うれしかった」と喜ぶ。

 ♪あんだんて♪は、子育て支援団体の不登校サポーター養成講座を受けた女性たちのうち、9人で始めた活動だ。相談事業のほか、年6回の「♪あんだんて♪通信」の発行、不登校を経験した子どもたちも参加するシンポジウムなども企画している。活動費は会費などで賄っているが、会員は相談に訪れるお母さんら現在100人ほどで、運営は厳しい状況という。多くのスタッフはパート勤めをしながら毎月の活動に積極的に参加している。

 昨年は活動10周年で記念本「不登校でも子は育つ」(学びリンク)を出版し、活動体験を通した具体的な内容が読者に好評だ。福本さんは「この活動を通して多くの出会いがありました。不登校になった子どもたちのおかげ、と今は感謝するぐらいです。まだまだ不登校で苦しむ子どもやお母さんは後を絶たず、これからも笑顔になったお母さんと出会うために、スタッフ全員で頑張っていきます」。


親子支援ネットワーク ♪あんだんて♪
京都市山科区竹鼻扇町47の8 サキゾーメゾン竹鼻101号 
TEL075(595)8255=水曜と第2・4金曜午前10時半〜午後4時