ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

元気づけ心を温めて
各種事業で成長支え(2014/05/12)

NPO法人山科醍醐こどものひろば


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余暇活動でボランティアの学生と百人一首に興じる子どもたち

 JR山科駅からそう遠くない住宅街の一角にNPO法人「山科醍醐こどものひろば」が運営する「こども生活支援センター」がある。借り受けている木造民家の1階には、食事をしたり勉強をしたりできる居間などがあり、夕方になると学校が終わった小学生や中学生がやってくる。何らかの事情で家でごはんを食べられない子どもも少なくない。「今日は学校、どうだった?」「今日なんか面白いことあった?」「今夜何作って食べる?」「宿題何するの今日は?」など、暮らしや学校の話、最近の音楽やアニメ、漫画、テレビの話などの何気ない会話がボランティアとの間で交わされる。自分にかまってくれる人がいるという事実が子どもの心を温めてくれる。

 NPO法人「山科醍醐こどものひろば」は京都市山科区と伏見区醍醐地区の子どもを対象にさまざまな事業を行い、子どもを元気づけている。拠点はここだけでなく、山科区にもうひとつ「こどものひろば元気スポット」、醍醐には「こどものひろば醍醐事務所」を置き、計3カ所。1980年に発足した「山科醍醐親と子の劇場」を母体としており、99年に現在の名称に変更、2000年にNPO法人化している。原点的な精神は、さまざまな家庭の子の健やかな成長を支えるというシンプルなものだ。

 子どものよりよい成長の一助となること、子ども中心のまちづくりのお手伝いをすること、貧困家庭があるという現実をふまえて活動することを基本に、子育て相談や学習支援、子どもの貧困対策、地域商店街などとの連携活動、創作劇上演などの文化活動、講演活動などと多彩な取り組みを行っている。こうした活動を支えるボランティア登録者は150人にのぼり、年間延べ約2万人の子どもが各種の事業を楽しんでいる。

 理事長の村井琢哉さん(33)は「子どもに対象を絞り複合的な取り組みを行うNPO法人は全国的にも少ないのでは。地域に根ざし、子どもを真ん中にしてよりよい子ども時代を経験してほしいと願って活動を続けています」と語る。

 問題を抱えた子どもたちやその家庭を支援する仕組みは決して十分とはいえない。支援制度やそうしたネットワークからこぼれてしまう子どもや家庭も少なくない。「こどものひろば」はそうした子どもたちに迅速かつ的確に対応しようとしている。困っている子ども、SOSを出している子どもを出来るだけ減らすのが願いだ。

 また全国的な統計によると、17歳以下の子どもの貧困率は15・7%(2009年)となっており6人のうち1人が貧困状態にあるとされ、貧困家庭は貧困の連鎖を生みがちで、引きこもりや家庭内暴力などさまざまな問題を抱えるケースも少なくないと言われる。このため「ひろば」はこの分野にも力を入れている。

 村井さんは「子どもたちの自己肯定感を高め、未来に希望を持てるようにするのが大切です。でも、現状は財政的にも苦しくまだまだです。でも頑張りたいと思います。地域、行政、学校などが連携し、すべての子どもが心豊かに育つことが、この法人の目標です」と力強く語る。


NPO法人山科醍醐こどものひろば
京都市山科区竹鼻地蔵寺南町2の1
TEL075(591)0877