ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

親亡きあとも支えるため
和やかにオープンに語り合う(2014/05/12)

京都「障害者」を持つ兄弟姉妹の会


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さまざまなことを語り合う「きょうだい会」のメンバー(京都市伏見区内)

 障害者を持つ親が集う場は少なくないが、障害者を兄弟姉妹として持つ人たちの交流の場は極めて少ない。そうした中で活動を続ける「京都『障害者』を持つ兄弟姉妹の会=略称・京都きょうだい会(上本善有代表)」は貴重な存在だ。現在、約20人の会員がいる。

 同会は@障害者自身の日常生活を少しでも豊かにしていくA障害者を持つ兄弟姉妹がお互いに励まし合い、悩みや不安、将来に対する夢などが語り合える関係を作り育てるB障害者とともに生きる社会の実現に向けて取り組む─を目標として掲げている。2カ月に1回の例会を京都市伏見区の京阪電鉄深草駅近くの喫茶店で開いている。

 5月10日に開かれた例会には、メンバーら7人が参加した。初めてやってきた若者の姿もある。自己紹介をかねてどんな障害を持つ兄弟姉妹がいるのか、今何をしているのかなどをオープンに話し合う。和やかな雰囲気だ。「知的障害の兄弟がいます。小さい頃はそれでいじめられたこともありました」「こんな会があるのを知って今日やってきました」など、構えることなく、また変な気を使うこともなく自由に話せることが、この会の特色であり、魅力だ。

 設立は今から30年以上前の1983年秋のことだった。母体となったのは、京都市伏見区にあった知的障害者施設の「親の会」だった。そこに「青年部」が組織され、ここで同会の糸井慶一副代表と梅田嘉一事務局長は出会い、兄弟として出来ることや悩みを話し合った。そして「京都きょうだいの会」設立に進んだ。認知度を高めようと、シンポジウムも何回か開くなど積極的な活動を続けたが、底をはうような時期もあった。糸井副代表は「例会に来るのは私と梅田さんだけというようなことが何回も続いたことがありました。もうだめかと思ったことも。でも何とか続けてこられ、本当に良かったと思います」とこれまでの軌跡を振り返る。

 梅田事務局長は「よく言うんです。障害者に向き合うのは『親は半生、兄弟は一生』なんです。親が亡きあと、兄弟は障害のある兄弟をどうサポートしていくのか。こうしたことは兄弟でないと分からないことです」と語る。

 同会が毎年秋に行う1泊交流会は非常に人気がある。京都の北部で開催するのだが、参加者は地元にとどまらず東京、愛知、和歌山など全国から駆け付ける。自分の思いや現状を打ち明け、しっかり聞いてもらうこと、気軽に話し合えることが参加者の心を温かくする。また同会の若い世代は内部組織として「しろくま会」を結成して積極的な活動を展開しようとしている。

 梅田事務局長は「語り合える場をもっと広げていきたいですね。そのお手伝いもしていきたい。そこからまた新たな視野が開けると思うのです」と明るく語る。また、糸井副代表は「社会、行政などに対する提言をしっかりしていかねばならないし、全国の多くの仲間の声を紡ぎ合わせて発信したい」と強調する。


京都「障害者」を持つ兄弟姉妹の会(略称・京都きょうだい会) 30年以上の歴史を持つ。
事務局・京都市伏見区石田大山町52の67。TEL 075(571)1973