ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

自立して社会生活送れるよう
就労体験で適職探し支援(2014/09/01)

京都中小企業家同友会社会問題研究会


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就労体験実習の打ち合わせをする中小企業家同友会のメンバーら(京都市左京区)

 京都市左京区の出町柳にほど近い閑静な住宅街。その一角に児童養護施設「迦陵園(かりょうえん)」がある。親がなんらかの理由で養育できない子どもたちがここで集団生活する。最近は親の虐待、家庭内暴力によって自宅で生活できない子たちの入園が増えている。

 6月下旬の夕方、同園の食堂には子どもたちや指導員らのほかに子どもを温かい目で見守る会社経営者ら7人が集まり、にぎやかな食事会があった。子どもたちをサポートするのは、京都中小企業家同友会の社会問題研究会のメンバーだ。同研究会の前川順・代表世話人やメンバーたちはこどもたちの中に入ってハヤシライスを食べながらさまざまなことを話し合う。中学や高校に通う園生たちとの会話が楽しい。

 代表世話人の前川さんはブライダルや七五三などの貸衣装や写真撮影を手掛ける会社の社長だ。だが、こうしたボランティアの道に入ったのはそう以前のことではない。家庭的に恵まれない子どもたちの力になりたいと、最初は七五三の時に着物を着てもらい、写真を撮っていたが、もっと支えたいと思って、子どもたちの適職を探す支援活動を始めた。同友会内に「社会問題研究会」を設置するなどして仲間を募り、二年前の夏から京都市伏見区にある児童養護施設・桃山学園で就労体験実習を始めた。

 その背景には児童養護施設を「卒業」した子どもたちの就労がうまくいかず早くにやめてしまう子どもたちがいるという事情などがあった。前川さんらはこうした実情から、メンバー企業だけでなく同友会内の企業に就労体験実習の受け入れを呼びかけるなどして就労体験を実現してきた。参加する経営者らは設計事務、造園業、飲食業などさまざまだ。

 迦陵園からも就労体験実習をしたいという要望が出て、今年春休みに一度、実習を行った。園生たちに好評でもっといろいろな職業を体験したいという声が上がっていた。先の夕食会の後に、メンバー企業経営者の7人と実習を希望する子どもたちとの面談が迦陵園のホールで行われた。子どもたちはこの春の就労体験の話やどんな職業に就きたいかなどを率直に話した。

 迦陵園の松浦弘和施設長は「卒業していく子どもたちの就労支援をしていただけるのは本当に心強い。子どもたちも頼りになるおじさん、おばさんを歓迎しています」と感謝する。

 前川さんは活動について「地域に生きる人間として当然のことだと思うのです。われわれは子どもたちの人生を背負いこむことはできませんが、寄り添い続けることはできる。そういう気持ちでやっています。この子どもたちが自立して幸せな社会生活、日常生活を送れるように頑張っていきたいし、もっと輪を広げたいですね」と熱く語る。