ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

聴覚障害者とともに歩む50年
社会の中で同じ暮らしを(2014/10/27)

京都市手話学習会「みみずく」


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上京支部例会で語り合うろうあ者と学習会の会員ら(京都市上京区)

 京都市上京区の西陣児童館。1階の奥まった部屋に京都市手話学習会「みみずく」(みみずく会)上京支部の会員や地域のろうあ者らが集う。例会は毎週1回、2時間ほど開かれる。10月第2週の例会には約20人が参加した。部屋には熱気と笑顔があふれる。手話通訳の練習をしたり、ろうあ者の体験談などを聞いて理解を深めるほか、ゲームなどで交流する。

 みみずく会は耳が聞こえて話せる健聴者が手話を学び、ろうあ者とともに歩もうという思いから約半世紀前に設立された。設立のきっかけは、病院勤務の看護師さんが、その病院に入院したろうあ者と医師の意思疎通が図れないで困っている姿を見て、仲間を募りろうあ者から手話を学ぼうと思い立ったことだった。ろうあ者に対する偏見が根強かった中で、ろうあ者を交えてのサークルの立ち上げは全国でも初めての試みだった。

 その小さな輪が時代とともに共感を呼んで次第に参加者を増やし、昨年、設立50周年を迎えた。現在のみみずく会は京都市内に11支部、約350人が活動する活発なサークルになっている。

 入会する人の動機はさまざまだ。家族や職場にろうあ者がいることがきっかけとなったり、手話を学んでろうあ者と友達になりたいという人もいる。会員は仕事を持っている人や主婦、学生、年配者と多様で、女性が多い。なかには47年間も続けている人もいる。

 高瀬るみ子会長は21年前からこのサークルに参加し、4年前に会長に就任した。「京都市聴覚障害者協会と一体となって活動を続けてきました。これまで続けられてきたのも聴覚障害者のみなさんのご理解やサークルに参加してきた先輩の皆さんのおかげです」と話す。

 みみずく会がずっと大事にしている理念がある。「手話を学んで、ろうあ者の良き友となり、すべての人に対する差別や偏見をなくしていくために努力し、その活動を通じて私たち自身も向上していくことを目的とする」というものだ。手話を学ぶ上で「聴覚障害者とともに歩む」ということがいかに大事か、サークルの会員は肝に銘じている。

 一層の発展には、会員の拡大だけでなく、専門的な通訳者ももっと必要だ。手話ができる人が増えることによってろうあ者の交流範囲も広がり、ろうあ者に対する理解も深まる。西陣児童館で行われた支部例会では、ろうあ者から「この会合でいろいろな情報が得られる」「健聴者に手話を教える機会のあるのがいい」などとの発言があった。また会員からは「ろうあ者から手話を学ぶのが楽しい」「ここに来たら元気がもらえる」などの声があげられていた。

 高瀬会長は「聴覚障害者がよりよく生活できることを目指す手話言語法の制定に向けてもがんばっていきたいと思います。ろうあ者が、社会の中で健聴者と同じ暮らしが出来るようにならなければなりません。いつでもどこでも手話でろうあ者と意思疎通ができる社会を目指していきたいものです」と話している。

京都市手話学習会「みみずく」
1963年秋に設立。メンバーは約350人。京都市の行政区単位ごとに支部を持ち、手話を学んでいる。昨年秋50周年を迎えた。