ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

歌や踊りで表情明るく
音楽を通じて社会をつなぐ(2014/11/25)

「あろあろ」


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太鼓に合わせて踊る障害者ら(京都市伏見区)

 フロアに知的障害者らが週5日集う。語らいやさまざまな作業を行うほか、太鼓やギターの演奏に合わせて江州音頭などを楽しく踊る。踊ったり歌ったりする障害者らの表情は穏やかでやさしく、心から楽しんでいることが伝わる。

 ユニークな運営を進めるのは就労継続支援事業を行う「あろあろ」。京都市伏見区の近鉄竹田駅からすぐのところに拠点がある。作業や就労支援の訓練だけではなく、歌や踊りを取り入れた事業運営に各地から関心が集まる。

 「あろあろ」とはハワイの言葉でハイビスカスを指し「たくさんの人に愛される、ともに分かち合う」という意味も持つという。

 命名したのはこの施設を開設した川口真由美さん(39)だ。福祉関係のNPO法人に就職したのがこの世界に入るきっかけだった。その後、福祉施設に勤めた。

 川口さんは以前から音楽活動をしており、「歌手兼ダンサーでもあります」と語り、土日などに各地のイベント会場で歌やダンスを披露している。障害者と触れ合うなかで、これを生かして障害者が施設にあっても生き生きとしてほしいと、訓練や作業の合間に歌や踊りを取り入れることにした。

 「障害者の皆さんが本当に喜んでくれたのです。明るい表情でやってくれ、私に感動を与えてくれます。いつの間にか各地のイベントから出演依頼がくるようになったのです」と川口さん。

 そして「もっと自由に活動をしたい」「障害者に寄り添いながらもっと音楽活動を取り入れたい」と思うようになって独立を決意し、今春「あろあろ」を開設した。「開設前後は期待よりも不安が大きかったのですが、いろいろな人に協力をしてもらって何とか運営しています」と施設長でもある川口さんは明るい表情で話す。

 現在の通所者は10人。20代から60代までの幅広い年齢層だ。作業では牛乳パックから和紙作りを行ったり、持ち込まれたヒマワリの種を選別して被災地の福島県に送る活動にも参加している。選別は非常に根気のいる仕事だが、障害者は熱心に取り組んでいる。そのヒマワリ畑の管理も行っているほか、無農薬野菜を寄付してくれる人もあり「あろあろ」前で随時販売する。

 もちろん、歌や踊りの練習も毎日欠かさずしており、先の江州音頭やおはら節、ケサラ、沖縄民謡などレパートリーも広い。「明明楽団」という名前も付けており、高齢者の福祉施設などを巡回する。それが評判を呼んで10月には京都市の梅小路公園でのイベントに登場した。地元の大学の授業で披露することも決まっているほか、城陽市で開催の手作りコンサートにも招かれている。

 「音楽を通じて障害者と社会をつなぐという方法もあると思うのです。練習は厳しいですが、頑張ってくれています。会場では心を込めて披露してくれます」と川口さん。

 「一人一人を大切にしたいし、風通しのよい、誰でもいつでも来れる、のびやかな運営を常に心がけたいですね」と抱負を話す川口さんの表情は明るさとエネルギーに満ちている。

「あろあろ」
今年4月、開設。所在地は京都市伏見区竹田桶ノ井町。就労継続支援B型事業を行う。音楽による交流活動が特色。