ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

斬新な発想に高まるニーズ
描きたい。純度高く作品に力(2015/03/09)

NPO法人障碍者芸術推進研究機構


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旧新道小のアトリエで絵を描く人たち(京都市東山区)

 京都市東山区の建仁寺近くにある旧新道小。その校舎の2階と3階の計五教室がアトリエに改装され、障害のある人たちが絵画制作に取り組む。開催は月2回。午前10時から午後4時まで行われる。アトリエになっている各教室では障害者が思い思いのスタイルでキャンバスに向かって生き生きと絵を描く。NPO法人「障碍者芸術推進研究機構」(松谷昌順理事長=京都精華大名誉教授)が障害者の芸術振興を支援しようと開催している。

 障害児童や障害者によって制作された絵画は思わぬ発想や、大胆な構図、斬新な色使いなどがみられ、以前から注目されている。障害者の絵画作品を求めるニーズも高まり、欧米だけでなく日本でも絵画制作で自立している人も少なくない。

 厚生労働省では障害者アート推進のための懇談会を設けたり全国障害者芸術文化祭を開催するなどの活動を展開している。京都市でも障害のある児童・生徒の作品展「小さな巨匠展」や大人のための作品展「京都とっておきの芸術祭」などが開催され関心を集めてきた。2009年には京都国際マンガミュージアムで障害のある人たちの作品展が催され、大きな反響を呼んだ。

 ところが、学校在学中の障害児や絵画制作などに熱心な施設にいる障害者はそうした場所を確保できるが、そうでない障害者は学校を卒業して就労すると、絵画制作から離れる人が大半だった。

 同推進研究機構の重光豊・副理事長は「開花し始めた才能が埋もれて行くのはもったいないことです。本人も続けたがっている。何とかせねばと、この分野に関心のある人が立ち上がって、NPO法人ができたのです。私たちは『天才アートミュージアム』という愛称をつけました。ここに通う人たちを登録作家と呼んでいます」と設立経過などを語る。

 スタート時は15人だったが、今では倍の30人が作家登録している。自閉症の人や知的障害者が多い。自分の描いた絵が告知ポスターに採用される人も出ているほか、コンピューターでアニメを制作している人もいる。描く絵は迫力のあるものが目立ち、根気のいる細かいタッチで街の様子や仏像を描いたものもある。風神雷神に題材を取ったものなどは構図は似ているが非常にユニ−クな仕上げとなっている。

 ここに通っている30代前半の女性は「月に1回か2回来て楽しく描いています。こういう場所があるのはいいですね」と語る。この人の描いた絵もあるポスターに採用された。「その時はうれしかった」と笑顔で話す。同推進機構の伊藤遊理事は「描きたいという純粋な思いから生まれた作品は迷いもなく純度が高いのです。だから訴える力が強い」と解説する。

 同推進機構では、現在は月2回の開催だが、今後はもう少し増やす方向で検討している。重光副理事長は「ここから将来、プロの画家が輩出するのを期待したいですね。4月上旬から『天才アートミュージアム展2015』を京都市内で開催します」と熱く語っている。

障害者の芸術活動に理解の深い有志が2011年夏にNPO法人「障碍者芸術推進研究機構」を設立。事務所は京都市伏見区桃山紅雪町。旧新道小(京都市東山区)の教室を拠点として活動。アトリエへの登録者は30人。