ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

誰でもふらり 寄れる「居場所」
癒やし癒やされて元気に(2015/04/13)

交流サロン「よっとーくりゃす」


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地域のさまざまな会合にも利用される(京都市南区・よっとーくりゃす)

 京都市南区の東寺に近い住宅街に交流サロン「よっとーくりゃす」がある。地域の人が気軽に寄れる「居場所」で、主婦の増田隆子さん(68)が代表を務める。玄関から入ったところに約40平方メートルのスペースがあり、そこが集いの場となる。

 増田さんはこの地域で生まれ育った。「ほんとうにここは近所同士が仲良く助け合って生活してきた所でした。人情があって楽しい地域だったんです」と増田さん。ところが、生活様式の変化から核家族化が進む一方、単身世帯、独居老人らが増えて次第に人と人との関わりも薄くなってきた。「以前はもっとひんぱんに話し合ったり、お互いの家を行ったり来たりしていたんですがね」と。

 親の介護が終わった時点から増田さんの呼びかけで徐々に近所の人たちが増田さん宅に集まって話し合うなどの「居場所」となり始めた。それから「お互いに気軽に立ち寄り話し合える場がほしい。ここを提供しよう」と思い立って、表の間を改装。2008年夏に「居場所」を正式スタートさせた。

 徐々に人の輪が広がり、現在では毎週水曜日の午後2時から7時まで近所の主婦やお年寄りや子どもたちらが集い、さまざまなことを話し合って交流を深める。お互いに癒やし癒やされ元気になって帰って行くのだ。

 毎月第1土曜日には喫茶店を開いている。300円でお菓子付きのお茶が提供されるとあって好評だ。南丹市の知り合いから提供を受けて新鮮な農産物も売っている。春から秋にかけては丹後の知り合いの農家や漁師さんから提供を受けて魚や野菜も販売する。

 毎月第2土曜日は「歌声喫茶」になり、地域の元中学校の音楽の先生がボランティアで指導する。さらに第3土曜日はボランティアによる15分間マッサージを行っているほか、第4土曜日にはトランプなどのゲームを楽しんでいる。

 このほか4カ月に1回、バザーも開いているが、いい品が安いと大好評で毎回150人ほどの老若男女がやってくる。寄せられた衣料品の一部はホームレスを支えるボランティアグループに役立ててもらっている。月に一回開く絵手紙教室も人気がある。

 増田さんは「町内会の寄り合いや知り合いのOB会、障害者の父母の会の会合などいろいろなことに使っていただいてます。少しでも役に立てればと思います。世の中、生きづらくなったと思いませんか。ここがその受け皿になればと思います」と増田さんに気負いはない。

 増田さんには夢がある。お年寄りらが集って楽しく共同で生活する「グッド・リビング」を実現したいというものだ。「夫が研究会をやっています。すでに賛同者が5、6人出ています。誰も仲良く支え合って生きて行きたいでしょ。その家が実現すれば、フリーな食堂を開いて地域のお年寄りや若者や子どもも集える場にできないかなと思うんです」。夫とともに物件探しも始めており、夢は実現に向けて進んでいる。

交流サロン「よっとーくりゃす」
京都市南区西九条東比永城町の自宅に交流サロン「よっとーくりゃす」を2008年8月に開設。増田さんが主宰者で、地域のお年寄りらの憩いの場となっている。