ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

子育てを孤立させない
サロンで情報交換、社会性学ぶ(2015/05/11)

NPO法人 京都チャイルド・トラスト


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子育てサロンに集う母親と幼児ら(京都市南区)

 毎週金曜日の昼前に幼児を連れた母親が笑顔でやって来る。京都市立洛陽工業高校の近くにある島岡医院の1階レッスンルーム。開放感がある約50平方メートルの部屋に母親と幼児が車座になって座る。何げない会話が弾み、時おり歓声も起こる。京都チャイルド・トラストが開催する「子育てサロン」の光景だ。

 参加した母親の一人は「上の子に続いて2人目の子もお世話になっています。ここでほかの子と遊ぶことができます。子どもに少しでも社会性を身につけたいと思います」とサロンの意義を話し、もう一人の母親は「日中は母子2人になって育児ばかりが気になって。ここに来ると、他のお母さんも頑張ってるんだと分かり、力がもらえるんです」と、日ごろの育児に元気が出てくると喜ぶ。

 島岡医院では出産後、育児不安になりがちな母親を支えようと、子どもが2歳前後までの母親を対象に同医院で「おっぱい村」を開設し、子育て相談などを行ってきた。今から15年前のことだ。この経験から2歳以降になっても子育て支援が必要だと考え、2004年5月に「チャイルド・トラスト」を立ち上げた。島岡昌幸院長は「子育てを孤立させず、関わりを持てる母親が群れる場を作ろうと思いました」と設立のきっかけを振り返る。

 「チャイルド・トラスト」の主な事業の一つは、先の子育てサロンだ。核家族化の進展などによって育児は難しい環境にある。身近に聞ける人がいない。限られた室内空間での育児が辛くなる。

 「突然に育児という中に放り出されるわけです。これでは大変です。昔は身近に育児を見てそれを手伝いながら大きくなってきたし、出産後もいろいろな人からアドバイスを得られる環境があったんですから」と語るのは「チャイルド・トラスト」の理事長、岡崎泰子さん。岡崎さんは「おっぱい村」のチーフコーディネーターでもあり、栄養士でもある。

 サロンは午前11時から始まり、何げない会話や互いの子どもの成長などを確かめ合うほか、育児情報を交換したりする。一緒に食事を取るのは今の子どもは家庭で食事の作法を学んでいない子が多いためだ。ここで食事を通して社会性を身につける。時おりボールリレー渡しゲームなどを組み込んでリラックスする。

 もう一つの柱となる事業は子育てにかんする講演活動だ。「脳と心のゆがみを正す子育て力」「乳幼児からのスキンケア」「ゴリラから見た人間の家族」「子育ての原点・温かい心を育む」などである。講師は医師や大学の先生が多く好評という。

 イベント事業も行う。もちつき、豆まき、クリスマス、かくれんぼ大会で母親と幼児同士の交流を深め、集団での活動を遊びを通して学ぶことになる。

 「チャイルド・トラストへの活動参加には何の資格制限もありません。子どもさんと2人、家に閉じこもっていないで、ぜひ参加してほしいですね」と岡崎さんは呼びかける。

NPO法人「チャイルド・トラスト」
NPO法人「チャイルド・トラスト」(京都市南区唐橋)は島岡医院内の「おっぱい村」を母体に誕生した子育て支援団体。2004年5月に発足。主に2歳前後から4、5歳までの子どもを持つ母親を対象にサロンやイベント、講演活動を行っている。