ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

勇気を共有、励まし合い半世紀
安心、笑顔、感謝が集う(2015/06/15)

心臓病の子どもを守る京都父母の会「パンダ園」


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昼食を準備するボランティアの人々(京都市左京区下鴨のパンダ園)

 京都市左京区の鴨川に近い閑静な住宅街の一角に「パンダ園」(杉本寿一園長)がある。「心臓病の子どもを守る京都父母の会」が運営する自主保育園だ。

 火曜日と金曜日の週2回、パンダ園は開かれる。心臓病を持つ就学前の子どもを中心に障害児や健常児らも通う。たいていは母親に連れられてやって来る。重い心臓病の子は酸素吸入用の小型ボンベやチューブ装着が欠かせない。

 6月5日、親も含めて約30人がやって来た。親子でのびのびと遊んだり、みんなで歌を歌ったり、工作をしたりと楽しいひと時を過ごす。もちろん保育士らがしっかりと見守っている。昼食はみんなの楽しみだ。同園のボランティアが作るもので手の込んだ料理が好評だ。顔を見合わせながら、「おいしいね」と言って食べている。

 同園の行事は盛りだくさんだ。杉本園長は京都市北区で農業もやっており、その農園でのイチゴ狩りやタケノコ掘り、イモ掘りなどは恒例行事で園児らは毎年楽しみにしている。ほかにも神戸市での2泊3日の体験旅行や秋の遠足、春にはお別れ遠足も行う。

 子どもが心臓病であると分かってからの親の心配は尽きない。子どもが無事に生き続けてくれるのか、その不安とも戦わねばならない。パンダ園はこうした悩みを抱える親とその子どもたちが安心して集える場なのだ。公共の保育の場で心臓病の子どもを受け入れてくれるところが少ない時代の、今から40年前に「京都父母の会」のメンバーらが設立した。それは関係者にとって大きな朗報だった。お互いに励まし合い、情報などを交換し、生きる勇気をもらい、優しさが宿る場として機能してきた。

 佐原良子・主任保育士はパンダ園の運営に携わってもう38年になる。「私も心臓病の子どもを持ちました。ここは病気の子も母親も笑顔があふれ、心からほっとできる場です。この居場所があることで励まされる親がたくさんいるのです。子どもの笑顔から元気を得るのです。そして子どもに感謝するのです」とパンダ園のあり方などを熱心に説明する。

 パンダ園を開設した「京都父母の会」は、ある病院の心臓病の小児外科の待合室から生まれたと伝えられる。「京都父母の会」はもうすぐ発足50周年を、パンダ園は40周年を迎える。杉本園長は「みなさんのご苦労によって今日があります。ほんとうに感謝せねばなりません。私も心臓病の子を持ち、多くのことをここで学ばせてもらいました。運営は大変ですが、ずっと継続していけるように頑張っていきたいですね」と強調する。

 病気の子どもが頑張って生きていく様子などを絵本として何冊も発行している佐原さん。「子どもの就学時の戸惑いをサポートする応援隊も出来ています。これからも以前と変わりなく励まし合い、前に向かって一歩一歩進んで行きたいと思います」と語る声は明るい。

心臓病の子どもを守る京都父母の会「パンダ園」
1975年、心臓病児のための自主保育の場として設立された。京都市左京区下鴨の「京都葵教会」内の一角で運営する。運営主体の「京都父母の会」は1965年に発足した。