ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

若い親 参加で活性、カフェ開設も
悩みや心配事、抱えないで(2015/08/24)

近江八幡市手をつなぐ育成会


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子どもたちには安全な遊び場であり、親には貴重な情報交換の場でもあるオープンスペース「ぱれっと」 (近江八幡市・マナビィ)

 子どもたちが絨毯(じゅうたん)の敷かれた部屋でボールを投げ合ったり、跳びはねたりと思い思いに遊ぶ。そばでは障がいのあるわが子に目を配りながらお母さんたちの会話が弾む。ここは近江八幡市手をつなぐ育成会が同市鷹飼町の元中学校舎の一室を行政から借り、リフォームして使用しているオープンスペース「ぱれっと」だ。「子どもたちには安全な遊び場ですし、お母さんたちには貴重な情報交換の場」と話すのは同育成会理事の一人、杉本僚子さん(45)。月に1〜2回午前と午後に開き、子どもの年齢に合わせて利用できる。

 育成会は、当時の養護学校の教師らが中心になって1972年に「市心身障害児(者)育成会」として結成された。障がいのある子どもたちの健全な育成と福祉の推進が目的で、自治会などを通して賛助金も寄せられ、運動会、コンサートなど活発に事業を実施した。しかし、親の高齢化に加え、賛助金も発足当初のようには集まらなくなり、活動のマンネリ化も指摘されるようになった。早くから会員だった八耳(やつみみ)佐知子さん(61)は「若い人が会に入ってこない悩みもあった。親も、自分たちが亡くなったら、子どもたちはどうなるのか−そんな心配が話題の中心になりがちだった」と振り返る。

 4年前、市内の喫茶店。杉本さんと友人の堀井頼子さん、小西寿和子さんの3人が八耳さんや特別支援学校の教師らに悩みを相談した。「幼稚園に通わせる方がよいのか、保育園がよいのか」「加配の先生は付けてもらえるのか」「小学校との連携はどうか」。分からないことばかりだった。「障がい児を育てる親の悩みは尽きないし、心配ごとも多い。悩みを抱えないでみんなで相談し、必要なら行政とも連携を取り合って解決していこう」。この時を機に若い親の育成会への参加も増えていった。今では個人会員は88人を数え、年代も20代から80代と幅広い。理事の秋村加代子さん(42)は「わが子が大きくなり、手が離れた会員も各種事業のスタッフとして協力してくださり、助かっている」と喜ぶ。

 ここ数年で新たに取り入れた事業はオープンスペースの開設のほか、同スペースを使った「おしゃべりカフェ」、月1回程度開催の手をつなぐスポレク事業、子どもたちが集団生活の中でさまざまなルールを学ぶ放課後等支援事業などだ。若いお母さんたちに人気なのが、月1〜2回、水曜の午前に開くおしゃべりカフェ。子どもたちが幼稚園や学校で学んでいる間、手作りケーキを楽しみながら日ごろの悩みや思いを自由に語り合う場だ。若い母親の一人は「同じ年ごろの子を抱えるお母さんもいて、気持ちが通じ合える。知らなかった情報も入ってくるし、楽しく刺激が多い場です」と足を運ぶ。

 障がい児を抱え育てる苦労は昔も今も変わりなく、不安や孤独感が付きまとう。「みんなで助け合って一歩ずつ前に進もう」。そんな育成会の願いが浸透しつつある。「子どもが大きくなるとともに悩みも複雑になる。先輩会員の体験は何よりも心強いし、これからも会員間のつながりを大切にして育成会を充実していきたい」。杉本さんらは語ってくれた。

近江八幡市手をつなぐ育成会
2007年に特定非営利活動法人になり、10年には自治体合併に伴い安土町手をつなぐ育成会と合併した。事務局は同市大森町の市民共生センター内。TEL 0748(38)0811