京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
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●広がる 地域の輪 NPO法人「Joint Joy」できる仕事を懸命に 共働の社会へ
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おにぎり作りに取り組む障害者ら (八幡市のJoint Joy) |
八幡市の男山団地。「くすのき近隣公園」の前に広がる竹園商店街の一角にNPO法人「Joint Joy(ジョイントジョイ)」の店舗がある。
店頭には各種おにぎりやクッキーなどが並ぶ。隣接の厨房(ちゅうぼう)で精神障害者や知的障害者らがおにぎり作りに精を出していた。いいにおいがする。白い帽子に白いマスク、白い作業衣の通所者が十数人。清潔感が漂う。「サケは10個だよ」「心を込めて握ろうね」などと確認の声が飛び交う。忙しそうだ。働く人は若い女性が多い。
だいたい一日50個から100個ほどを握る。イベントがあるときなどは一気に増えて600個以上作ることもある。サケや梅干しなどの定番以外にかつお風味のまんまめしおにぎりやオムライス風のおにぎりなども人気だ。
現在、同所に登録している人は16人。八幡市内に住む人が大半で、月曜から土曜日まで通う人もいれば、週に3日の人、午後2時で仕事を終える人などさまざまだ。それぞれの障害や意欲に応じて働けるシステムになっており、おにぎりや洋菓子の製造、販売や宅配、翌日の具材の仕込みなど次々と仕事が回ってくる。すでにここで仕事環境になれて近所のコンビニに就労したケースや洗濯業者に実習に入っている人も少なくないなど成果を上げている。
「Joint Joy」は2013年春にスタートし、京都府から障害者福祉サービス事業所指定を受けた。立ち上げたのは山本陽子さん(52)。山本さんは若い頃は洋菓子店を夫と経営していたが、その後、福祉の世界に入り京都市右京区や八幡市などの福祉施設で15年間働いた。働くうちに「障害のある方の仕事場をもっと広げたい」と思うようになり、八幡市にこの店を開店した。
「一生懸命になってこの拠点を築いたんですが、最初は利用者ゼロだったんですよ。でも地域の方々やスタッフの協力を得て何とかやってこれました」。山本さんの明るい性格がスタッフを引っ張る。
「Joint Joy」という命名は「喜びをつなぐ。そういう場所でありたいと願った結果、つけたのです。人は人とつながりながら生きていきます。その結び役に徹して障害のある方が今よりももっと当たり前に地域社会に溶け込むようにお手伝いしたいのです」と語る。
山本さんの頭の中にはいろいろな夢や計画があるようだ。その原点は「福祉の壁を乗り越えた共働できる社会づくり」だ。
「Joint Joy」ではこれまで行ってきた主要三事業、おにぎり、弁当、洋菓子の三分野をもっと魅力あるものにしていく一方、新たな取り組みとして組みひも作りも導入中だ。ストラップなどにして販売する。それに地域に新たな洋菓子店を出す計画も持っている。山本さんは「まだまだ軌道に乗ったとはいえません。道半ばだと思っています。農業に携わりながらのグループホームづくりもしたいですね」と夢を広げている。