ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

京都タオル帽子の会

無理せずできることだけ
がん患者の心まで包み込む(2016/02/29)


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タオル帽子を縫う会員たち(京都市北区)

 毎月2回、京都市下京区のひと・まち交流館京都の一室に中高年を中心とした女性が集う。抗がん剤の副作用で頭髪が抜け落ちたがん患者のためにタオルを活用して帽子を縫うためだ。「うまく縫えたわ」「ここがちょっとおかしいね」と、おしゃべりを楽しみながら心を込めて作る。多い時は20数人、少ない時でも10数人が参加する。完成した帽子は要望のあったがん患者に無料で配布している。タオル帽子は汗をよく吸い、洗濯もできる、手軽にかぶれるなどのメリットがある。

 運営するのは「京都タオル帽子の会」のメンバーだ。2011年秋に大西ふさ子さん(66)が呼びかけて大西さんを含め3人で発足した。代表の大西さんは看護師。がん患者も担当していた。発足の1年前にたまたま岩手県で行われていた帽子プレゼント運動に関心を持ち、京都でもやろうと10枚の帽子を作って患者さんにプレゼントした。「ものすごく喜んでいただいて。何かボランティア的なことをしたいと考えていた時でした。帽子をつくろうと思ったのです」

 発足後の1年で1000枚のタオル帽子を作?て配布した。運動に共鳴してくれる人も次々と現れ、現在では会員は150人に増えた。うち帽子を作る人は約70人。ひと・まち交流館京都のほか、京都桂病院・がんサロン「きずな」や済生会京都府病院・がんサロン「なでしこ」、鞍馬口医療センターなど8カ所で帽子作りにいそしんでいる。慣れた人で30分、遅い人でも1時間半ぐらいでできる。「できる人ができる時にできることをできるだけする」というのが会のモットーだ。「無理をしない。これが長続きする一番だと思います」と大西さんの表情は明るい。

 今では年間に2000枚のタオル帽子を作るまでになった。配布先も京都一、第二赤十字病院、京都医療センター、福知山市民病院、彦根市立病院、豊岡病院など30カ所近くに広がっている。

 お礼の手紙も次々に寄せられている。「抗がん治療のため抜け落ちていく髪を見て母は悲しんでいましたが、心温まる手作りの帽子に慰められました」「タオル地なので柔らかく肌ざわり、かぶり心地もよくて気に入ってます。ありがとう」「朝晩寒いので、いただいた帽子、手放せません」「デザインもよくてうれしいです」などだ。

 直接にがん患者に帽子を手渡す機会はそう多くないため、こうした手紙が会員の心を高め励ましている。同会の運営は楽ではないが、前年の収入に見合った活動をしているおかげで、なんとかやりくりができているという。

 大西さんは「昨年からしっかりした組織作りをしようと意識して徐々に進めています。先に言った8カ所ごとのリーダーを決めたり、役員会を開いて活動計画などもしっかりしたものにしたいと思います。NPO法人化も選択肢のひとつかもしれません。とにかく無理のないよう頑張っていく。これだと思います」と強調する。同会では京都市南部や宇治市での活動も強化したいと考えている。今年11月には発足5周年を迎える。

京都タオル帽子の会
2011年11月、大西ふさ子さんが結成。徐々に活動を広げ年間2000枚のタオル帽子を無料配布するまでになった。事務局は大西さんの自宅(京都市上京区末之口町998の19)