ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

京都リップル

誰もが映画で触れ合いを
字幕つくり副音声ナレーション(2016/06/27)


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モニターを見ながら、映画の副音声を読み合わせる京都リップルのメンバー(京都市北区・京都ライトハウス)

 映画のスクリーンに字幕が添えられ、副音声で場面を表現するナレーションが流れる。視覚、聴覚障害者ら誰でもが映画を楽しめるバリアフリー(ユニバーサル)上映。字幕には「ゴォー、ゴォー」「サワ、サワ」と風の音までも表され、ナレーションではストーリーの進行に加え、役者の表情も語られる。京都リップル(事務局・京都市右京区)はこのバリアフリー上映の企画・運営を行っている。これまでに手掛けた映画は270本以上に及ぶ。

 京都リップルは、代表の京都市右京区宇多野、同志社大職員の深田麗美さん(35)が、学生時代の2003年5月に仲間ら4人で立ち上げた。深田さん自身も聴覚に障害があり、障害のある学生への支援制度が各大学でばらつきがあることを知った。学生同士でサポートしようとの思いがリップル設立のきっかけとなった。その後、各大学でサポート制度も整い始め、メンバーも社会人となったことから、リップルの存続まで考えたという。現在、リップルの主要メンバーでもある深田さんの母親、美知子さん(66)が、京都市聴覚言語障害センターで映画に字幕を付けるボランティアをしていたことから、リップル設立の翌年から映画の字幕、副音声づくりを始めた。

 リップルのメンバーは現在、30〜70代の26人。京都市内を中心に長岡京、向日、大津の各市などの学生、社会人、主婦ら。副音声と字幕の班に分かれて作業している。副音声は月2回、京都市北区の京都ライトハウスに集まり、モニター画面を見ながら、読み合わせや表現のチェックを行っている。映画を15分ほどで区切って、数人で分担。各家庭でつくってきたナレーション文をすり合わせる。「ここは下の名前の方が」「やっぱり名字の方がいい」などと意見を出し合う。2012年に手掛けた映画「はやぶさ 遥かなる帰還」では、宇宙船の構造を知らず、苦労したという。

 班長である美知子さんは「見たままで、それ以上は言わない。想像する部分や心の中まで触れると作品のおもしろさが失われる」と簡潔で的確なナレーションに努めている。ナレーションはメンバー8人が交代で、上映とともにライブで行われる。京都市下京区高材木町、主婦の竹内美紀さん(61)は「せりふとかぶらないように、タイミングが難しい」といい、上映の事前に10回以上、画面を見ながら練習するという。3月にメンバーになったばかりの京都市北区大将軍、主婦の藤恵莉さん(30)は「読書が好きなので、ナレーションの文章をつくるのがおもしろい」と感じている。「障害があっても、映画について親子・家族で話ができることがうれしい」との鑑賞者からの声がメンバーのやりがいになっている。5月には新たに大学生がメンバーに加わったが、若者の参加を呼び掛けている。  5月で20回を数えた京都市中京区のハートピア京都で行われている「ハートフルシネマ」には映画の選定、企画から携わっている。代表の深田さんは「障害のある、ないにかかわらず、みんなが構えずに触れ合うきっかけになれば」とバリアフリー上映へ思いを託している。

京都リップル
2003年5月設立。映画に字幕、副音声をつけたバリアフリー(ユニバーサル)上映の企画・運営を行っている。メンバー26人。深田麗美代表。事務局は深田さん自宅(京都市右京区宇多野御屋敷町18)。