ともに生きる・福祉のページ
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広がる 地域の輪

株式会社カスタネット

息長い貢献へ独自商品次々
雇用創出、障害者催しを協賛(2016/08/08)


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商品開発した「マルチポンチョ」をチェックする植木社長=左から2人目(京都市南区・カスタネット本社)

 企業の営利活動と社会貢献(非営利活動)を両輪とした新しいビジネスモデルを目指している。法人向けオフィス用品販売のカスタネット(本社・京都市南区)は、障害者雇用の創出に一役買い、障害者イベントへの協賛などを積極的に行っている。植木力社長(58)は「支援が継続できる事柄に限定している」と息の長い社会貢献を続けている。

 カスタネットは、大日本スクリーン製造(現・SCREENホールディングス)の社内ベンチャーとして2001年2月に創業した。植木社長が管理系の仕事をしていたことからオフィス用品を扱った。創業当初から「小さな社会貢献をしよう」とダイレクトメールの袋詰め作業などを障害者施設に依頼していた。決算がやっと黒字化したのは3年目。周囲から「社会貢献するのはもうかっている企業がすること」と冷ややかな視線を受けたという。植木社長はこの時、出身の宮津市で高校時代に傾倒したパナソニック創業者、松下幸之助氏が社会貢献の必要性を説いた言葉を思い起こしたという。

 これまでに、全国から未使用の中古文房具を集め、カンボジアの小学校に贈るボランティア活動を発端に、校舎も寄贈した。現在、カンボジアでは小児科病棟への給食支援を行っている。この寄付財源はトナーカートリッジの売上高の1%と明確にしている。また、国内では全国車いす駅伝競走大会、障害者シンクロナイズドスイミング・フェスティバル、視覚障害者京都マラソン大会などに協賛している。協賛金についても、CSR(企業の社会的責任)報告書を発行し、金額を明記している。

 商品開発では、使用済みの点字用紙に着目し、紙袋に活用した。点字の凹凸がデザインになり、好評で、加工を委託する障害者施設では10人ほどの雇用を生んだという。さらにオフィス用品の全国への販路拡大へ自社PRを兼ねたクッキーの土産物販売では包装作業を障害者施設に依頼している。

 昨年9月に発売した黒いポリ袋を改良した「マルチポンチョ」は、東日本大震災の教訓を生かし、かぶることで防寒、雨がっぱ、屋外での着替え時の目隠しなどの機能があり、折りたたむと15a四方程度で携帯性に優れている。熊本地震では発生直後に6000枚を被災地に贈った。使用者から「周りの人に見えないように体拭きで使い、助かった」などの声をもらったという。今年6月にはサイズを小さくし、目立つ黄色で前後に反射テープを付けた「キッズマルチポンチョ」も商品ラインに加えた。この商品の袋詰め作業は京都、宇治両市の障害者施設6カ所に発注している。

 企業の社会貢献について、植木社長は「経営者、従業員にとって金もうけだけでは仕事にやりがいが生まれない」と従業員のモチベーション向上にもなると考えている。今後「障害者自らが加工、販売できる商品を開発したい」と思案している。

株式会社カスタネット
2001年2月創業。法人向けオフィス用品販売など。資本金1000万円。売上高約3億円。従業員10人。本社・京都市南区東九条西河辺町。東京、大阪に営業所。04年さわやか福祉財団「勤労者ボランティア賞」受賞。