ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

稀少難病者・児と家族の会「京都わらび会」

励まし合い病に向き合う
苦労を知る同士、情報を交換(2017/01/23)


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病気や生活について、悩みを打ち明け、相談する稀少難病者とその家族ら(京都市下京区)

 「診断はどこで受けましたか」「障害年金をもらうにはどうしたらいいですか」…。症状や生活について参加者から次々に出される質問に、経験者がアドバイスする。昨年11月中旬に京都市下京区で開かれた難病者やその家族が悩みを話し合うミニ交流会。稀少難病者・児と家族の会「京都わらび会」(事務局・京都市上京区)が主催した。稀少難病であり、患者が少なく、病気の情報がなかなか得られない。参加者には貴重な機会になっている。

 京都わらび会は1980年、病気の原因が不明で治療法が確立していない難病の中でも、特に患者が少なく、相談相手がいない稀少難病12疾患の13家族16人でスタートした。現在、指定難病も増えたため、後縦靭帯(じんたい)骨化症、レックリングハウゼン病、脊髄小脳変性症など24疾患の患者や家族の87人が会員。京都市内を中心に、京都、大阪府内からも交流会、専門医を招いた医療講演会に訪れる。会長の京都市左京区の岸十九恵さん(73)は「自分も患者として苦しかったので、励まし合って一緒に病気と闘いたい」と話し、患者が独りで悩まないように、自宅を訪問したり、電話相談を受けている。

 昨年11月の脊髄小脳変性症ミニ交流会には14人が参加。京都市右京区の60代の女性は39歳で発症したといい、「病気や生活の仕方などについて、みなさんと話していると気持ちが楽になり、頑張ろうという気持ちになります」と会話を楽しんでいた。夫が多系統萎縮症と診断された京都市上京区の60代の女性は「この疾患は進行するので、慌てないように生活全般で事前に準備できることを知りたい」と質問していた。

 症状が治まり、穏やかになった会員らは、「わらびもち」というOB会組織を十数人でつくり、わらび会の運営を支援している。ムコ多糖症で息子を亡くした京都市山科区の小長谷禎一さん(77)は昨年4月まで「わらびもち」代表を務めた。「大変な苦労を知っている。親の気持ちになって、お役に立ちたい」と交流会の準備などを手伝っている。

 わらび会では年3回、会報を出し、交流会や医療講演会の報告のほか、新しい医療情報などを紹介している。さらに「笑顔で闘病できるように」との思いで、車いすで参加できるバスツアーも行っている。同時に、稀少難病には専門医が少ないことから、さらに研究を進めてもらえるように厚生労働省などに要望活動を行っている。新たな取り組みとして、患者同士で悩みを聞く「ピアカウンセリング」を進めている。岸会長は「ネットなどで難病情報を調べても患者や家族にとって分からないことばかり。患者自身の体験談を聞くことで悩みが和らぐ」と期待している。「独りぼっちをなくそう」が会の合言葉。ホームページなどで「独りで悩まずに電話してください」と相談を呼び掛けている。

稀少難病者・児と家族の会「京都わらび会」
1980年に結成。京都市内を中心に会員87人。岸十九恵会長。NPO法人京都難病連加盟。
事務局は京都市上京区堀川通丸太町下ル、京都社会福祉会館4F京都難病連内。