ともに生きる・福祉のページ
京都新聞掲載「ともに生きる」「福祉のページ」の記事をネット上で紹介するコーナーです。
広がる 地域の輪

認定NPO法人「あったかサポート」

行政の「すき間」を支えて
労働相談や情報発信を柱に(2017/04/11)


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事業について打ち合わせをする笹尾達朗常務理事(中央)とスタッフ=京都市下京区の「あったかサポート」事務局

 労働と社会保障についてサポートする認定NPO法人「あったかサポート」(事務局・京都市下京区)。労働相談などを通して、行政のセーフティーネットから抜け落ちた人たちをフォローできればと、活動している。

 あったかサポートは2005年6月、社会保険労務士、弁護士、司法書士、税理士、大学研究者、中小企業経営者、労働組合役員ら約90人で結成した。同年10月にNPO法人の認証を受け、15年に認定NPO法人となった。現在、会員は約220人。立ち上げ時からメンバーで常務理事を務める社会保険労務士の京都市伏見区の笹尾達朗さん(65)は当時、非正規雇用が増え、経済格差が社会問題になっており、「セーフティーネットが問われていた。当時の法律や制度では労働・社会保険の適用を失った人たちをサポートしよう」という設立趣旨を説明する。

 活動は、仕事と生活に関わる情報発信、教育・宣伝、相談、ネットワークを柱にしている。情報発信では、労働・社会保険についての基礎知識の説明、セミナーや講演会の案内などを掲載した情報誌を年4回、発行している。教育・宣伝では高校や大学への「出前授業」を行い、社会に出る前に知っておくべき知識として、給与明細、労働条件通知書、求人票の見方なども教えている。セミナーや講演会ではその時代の問題を取り上げ、「女性労働者の保護」「若者への就労支援」などをテーマに京都府内で年20回ほど行っている。会員約20人が講師を務めている。

 相談活動では、起業するときの社会保険、労災の請求方法など、労働者、中小企業経営者、就職活動をしている人らを対象に行っている。最近は働く人のメンタルヘルス対策に力を入れている。セクハラ、パワハラ、マタハラの三大ハラスメントが多く、今後の身の振り方を聞かれるといい、医師の診断を受けるなど労災請求の手順、傷病手当があることなどを説明している。ただ、退職後に相談に訪れる人が多いが、いろいろなセーフティーネットが受けられる退職前に来てほしいという。

 ネットワークづくりでは、行政との連携を行っており、労働相談、労働教育、就労支援事業について京都府から委託されている。縦割り行政と異なり、この3事業を一体的に行っていることがあったかサポートの特徴という。笹尾常務理事は「行政が行っていない活動を私たち民間団体が補完できれば」と事業に取り組んでいる。

 今後の取り組みとして、「働き方改革」に注目している。全員参加型社会を目指すには、社会的引きこもり、介護離職、がん離職、メンタルによる離職などに対して、社会復帰するためにきめ細やかな対応が必要になっているといい、笹尾常務理事は「『働きたくても働けない人』への就労支援を行っていきたい」と対応策を検討している。

認定NPO法人あったかサポート

2005年6月結成。労働と社会保障について、相談、教育・宣伝などを通してサポート活動を行っている。
会員約220人。理事長・澤井勝奈良女子大名誉教授。
事務局・京都市下京区間之町通下珠数屋町上ル榎木町306 坂口ビル2階。